2005 Fiscal Year Annual Research Report
二枚貝の外套膜に注目したバイオミネラリゼーション機構の解明
Project/Area Number |
16658086
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
豊原 治彦 京都大学, 農学研究科, 助教授 (90183079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 徹 東北大学, 農学研究科, 教授 (70344330)
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Keywords | マガキ / 二価金属イオン / 金属輸送 / バイオミネラリゼーシ / トランスポーター |
Research Abstract |
マガキから得られた二価金属イオン輸送体の構造と機能について検討した.マガキ金属輸送体は556アミノ酸からなる12回膜貫通型タンパク質であり,mRNAの3'非翻訳領域に哺乳類の相同タンパク質に認められる鉄応答エレメントは求められなかった.このことから,マガキの二価金属イオン輸送体は転写産物のレベルにおいて体内の鉄イオン濃度による量的制御は受けていないことが示唆された.シロイヌナズナやホタテガイのものと約50%のアミノ酸レベルで相同性を示した. アフリカツメガエルの卵母細胞を用いた発現系により機能解析を行ったところ,弱酸性域において鉄イオンの取り込みが検出された.競合実験の結果からは,銅,マグネシウム,カドミウムとの競合が認められたが,亜鉛とは競合しなかった.この結果から,マガキの二価金属イオン輸送体は幅広い金属に対して取り込みスペクトルを有することが明らかとなった.RT-PCR分析により発現部位を調べたところ鰓,中腸腺,血球において強い発現が認められた. 放射標識されたカルシウムを用いて調べた結果,マガキ二価金属イオン輸送体遺伝子を発現させた卵母細胞は有意に高いカルシウム取り込み活性を示したことから,本輸送体はカルシウムに対しても輸送能を有することが明らかとなった.これまでに報告されている二価金属イオン輸送体は,昨年,我々が報告したホタテガイ由来のものを除き,哺乳類から線虫にいたるまでいずれの種由来のものもカルシウム輸送能を示さなかった.今回,ホタテガイに続き,マガキにおいてもカルシウム輸送能が認められたことから,二価金属イオン輸送体がカルシウム輸送能を示すのは二枚貝特有の機能と考えられる.二枚貝では貝殻を形成するバイオミネラリゼーション過程において大量のカルシウムを必要とするため,二価金属イオン輸送体がカルシウム輸送能を進化過程で獲得したものと推察される.
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