Research Abstract |
遺伝子解析で重要部分なすデータベース検索において,これまで分子生物学からのアプローチや情報学からのアプローチあるいはその融合的アプローチにより幾多のアルゴリズムが研究されてきた.本研究はDNAから遺伝子を発見するプロセスに全く工学的な画像情報処理の考え方を導入した新たなアルゴリズムを開発することを目的とする.遺伝子配列を1次元において20階調の画像とみなし,画像解析で用いられるテクスチャー解析を時計遺伝子に適用させることで,特徴量を抽出し比較することによる遺伝子間の相同性解析の検討と遺伝子の特徴量抽出を行った.材料として,Homo sapiens, Mus musculus, Rattus norvegicus, Xenopus lavevis,およびDaino rerioの時計遺伝子群の一部であるper1,per2,cry1,cry2,clock,bmalの配列を使用した.これらの配列から得られた20種のアミノ酸を0から19の数字で表し,同時濃度生起行列によるテクスチャー解析で特徴量を抽出した.同時濃度生起行列とは,画像中で相対的に一定の位置関係(d)にある2点の濃度対の統計量に基づいた解析方法である.解析には,一様性,コントラスト,および局所一様性の3種類の特徴量を使用し,それぞれの特徴量を異種間で比較した.次に,画素間の距離dを1,5,10に変化させ,特徴量の値の推移を比較した.比較対象として,相同性のないArabidopsis thalianaの遺伝子(wrnexoとT7A14.14)とHomo sapiensの遺伝子(p53)を使用した.d=1のテクスチャー解析において,同じ時計遺伝子では生物種に関わらず特徴量にほとんど差はなく,相同性のある塩基配列間では,特徴量はほぼ同じ値をとる.このことから,同時濃度生起行列よる遺伝子の相同性解析は,有効であることが確認された.また,dを変化させたとき,相同性のある塩基配列間では,特徴量は同じように変化するが,パターンの推移のみに注目すると,相同性のない遺伝子においても,時計遺伝子と同じパターンを示しているものがあるため,いくつかの特徴量のパターンと値の比較を行う必要がある.
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