2005 Fiscal Year Annual Research Report
亜臨界水・水熱反応を用いた食肉資源のネオプロセシングに関する基礎的研究
Project/Area Number |
16658101
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西邑 隆徳 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (10237729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 昭仁 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (50125027)
若松 純一 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (30344493)
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Keywords | 亜臨界水 / 水熱反応 / 食肉タンパク質 / ペプチド / 生理活性 |
Research Abstract |
家畜のと畜解体工程および食肉加工工程で生じる屑肉などはテーブルミートとしては利用できないが、良質なタンパク質が豊富に含まれており、これらのタンパク質の新たな利活用が求められている。近年、「水」を反応場としてタンパク質などの高分子を分解する亜臨界水・水熱反応が着目されており、本研究では、1.亜臨界水・水熱反応の諸条件(温度、時間)が食肉タンパク質の分解様相に及ぼす影響を明らかにするとともに、2.亜臨界水・水熱反応生成物の生理活性を調べることによって、亜臨界水・水熱反応を食肉タンパク質資源の利活用技術として応用するための基礎的データを得ることを自的とした。 先ず、食肉タンパク質に対する適正な亜臨界水・水熱反応条件の概略を把握することを目的に、鶏筋肉、鶏筋原線維、鶏ミオシンおよびコラーゲンを試料として用い、亜臨界水・水熱反応条件がタンパク質分解に及ぼす影響を検討した。その結果、(1)250℃以上の亜臨界水処理では遊離してきたアミノ酸の分解が促進されること、(2)亜臨界水・水熱反応温度の上昇に伴ってアンモニア生成量が増加すること、(3)亜臨界水・水熱反応によって生成されたペプチドの大きさ(分子量)は処理温度の上昇に伴って低下すること、(4)生成されたペプチドのACE阻害活性は鶏ミオシンやコラーゲンでは亜臨界水・水熱反応温度の上昇に伴って顕著に低下した。以上の結果から、食肉タンパク質への亜臨界水処理は250℃以下が適当と判断された。 次に、上記温度域で食肉および食肉タンパク質に対して亜臨界水処理し、生成されるペプチドの量および生理活性について詳細に検討した結果、(1)畜産系バイオマスの亜臨界水・水熱反応生成物にはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性があること、(2)血管内皮細胞および線維芽細胞に対して細胞毒性を示さず、これらの細胞の増殖を促進する効果があること、さらに、(3)βアミロイドの蓄積を抑制する働きを持つペプチドが生成される可嘩性などが明らかとなった。 以上の結果は、これまで不明であった、亜臨界水・水熱反応による食肉タンパク質の分解様相を明らかにしたものである。有機系高分子の分解に用いられる亜臨界水・水熱反応温度は300℃近辺であったが、この温度域での処理は、生理活性を有する機能性ペプチドを回収するには適当でなく、食肉タンパク質資源からの有価物回収を目的に亜臨界水・水熱反応を行う場合180〜220℃の温度域が至適であることを示したことは、実用化技術の開発に大きく資するものと思われる。
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