2004 Fiscal Year Annual Research Report
新規インスリン抵抗性自然発症マウスのインスリン抵抗性発現機構に関する研究
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16659040
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
前田 利男 静岡県立大学, 薬学部, 助教授 (00137069)
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Keywords | インスリン抵抗性 / 2型糖尿病モデルマウス / アディポサイトカイン / グレリン / レプチン / 脂肪組織 / PPAR-γ / インスリン |
Research Abstract |
我々は、新たにインスリン抵抗性自然発症マウス(H系)と加齢によってもインスリン抵抗性を発現しないマウス(L系)を系統分離した。これらのマウスを用い、インスリン抵抗性発現機構について検討した。これらのマウスを標準固形飼料で自由に摂餌、摂水できる環境で飼育すると、H系は、L系に比し摂餌量が20%程度、体重増加も20%程度多く、脂肪組織は2倍以上となる。系統分離する前のwild系のマウスでは、H系とL系の中間的な値を示した。H系は、3ヵ月齢まで空腹時血糖は高くなく、尿糖も検出されない。しかし、9週齢ごろから血中インスリン値が高くなり、糖負荷試験、インスリン負荷試験でインスリン抵抗性が観察された。6ヵ月齢では、約半数のマウスで、空腹時血糖が高く、尿量が増加し、尿糖が検出され、糖尿病症状が観察された。摂餌量を20%削減すると、L系では体重増加の抑制は認められなかったが、H系では体重と脂肪組織重量の増加が有意に抑制され、インスリン抵抗性発現の改善効果が認められた。そこで、摂食行動に関与する血中のleptinおよびghrelinの濃度を測定したところ、インスリン抵抗性発現したマウスでは、leptinが高く、ghrelinは低かった。胃のghrelinおよび視床下部のGHS-RのmRNA発現には顕著な違いは認められなかった。LeptinとghrelinがH系のインスリン抵抗性発現にどのように関与しているかについては現在検討中である。インスリン抵抗性発現には、脂肪組織で産生されるアディポサイトカインが深くかかわっていることが示されている。そこで、脂肪組織のアディポサイトカインのmRNA発現を検討した。インスリン抵抗性が発現した15週齢のH系では、L系に比し、脂肪組織が2〜5倍と大きく、adeponectinおよびresistinのmRNA発現量が減少し、leptinおよびTNF-αのmRNA発現量が増加した。これらの変動は、インスリン抵抗性が発現していない7週齢では観察されなかった。また、摂餌量を20%削減することにより、これらのディポサイトカインのmRNA発現の変動は改善された。したがって、これらのアディポサイトカインの産生量の変動が、インスリン抵抗性発現の少なくとも一因になっていると推察される。また、脂肪組織におけるPPAR-γのmRNA発現が増加しており、その関連性について検討中である。このH系では、すべてのマウスで一定週齢になるとインスリン抵抗性が発現し、一方、L系では加齢によっても全く観察されなかった。今後、両系の遺伝的相違を詳細に解析することにより、興味ある知見が得られると期待される。
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