Research Abstract |
Spot14は,肝臓等において脂質合成系酵素遺伝子を統御する転写調節因子であると考えられている。従来より,Spot14遺伝子の発現は概日リズムを示すことが知られており,今回,光刺激が同遺伝子を制御する機構の解析を行なった。夜行性のマウスを,通常の12時間:12時間の明暗周期,自由摂食の条件下に飼育すると,暗期初頭にSpot14 mRNAレベルのピークが見られた。恒暗条件下においても,Spot14遺伝子の発現は概日リズムを示した。また,時計遺伝子Clockの変異マウスでは,明暗周期,自由摂食下でもリズムが消失し,Spot14遺伝子が時計遺伝子の制御下にあることが確認された。一方,6時間:18時間の短日周期,あるいは18時間:6時間の長日周期で正常マウスを飼育すると,Spot14遺伝子発現リズムの位相がそれぞれ前方あるいは後方にシフトし,光同調性中枢時計の統御下にあることが明らかになった。他方,給餌を明期の4時間のみに行なう制限摂食条件下では,Spot14遺伝子発現リズムの位相が前方にシフトした。他方,暗期4時間のみの制限摂食条件下では,Spot14 mRNAレベルは2峰性のリズムを示し,Spot14遺伝子発現に及ぼす明暗サイクルと摂食タイミングの効果において,位相の乖離が生じたものと考えられた。以上より,自由摂食下においては,光同調性中枢時計は摂食行動,食餌栄養を介し,またこれらと協同的に,肝臓におけるSpot14遺伝子の発現を活性化するのに対し,時間制限摂食条件下では,光同調性中枢時計は摂食同調性時計,食餌栄養等と乖離してSpot14遺伝子の発現を制御することが示唆された。 また,視交叉上核の光刺激応答性リズム出力機構の全容を解明するため,恒暗条件の暗期相当期(主観的夜)に光照射を行なったマウスの視交叉上核において発現が変動する遺伝子のマイクロアレイ解析を行ない,予備的知見を得た。
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