2004 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体関連分解の破綻によるタンパク質フォールディング異常病の解析
Project/Area Number |
16659076
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
緒方 繁憲 福岡大学, 医学部, 助手 (30131816)
|
Keywords | 小胞体関連分解(ERAD) / プロテオゾーム / アグリゾーム / ジペプチジルペプチダーゼIV / ユビキチン / α1-アンチトリプシン / 糖鎖プロセッシング |
Research Abstract |
小胞体関連分解(ERAD)の経路は一見確立されたかのように思われる。しかし、タンパク質フォールディング異常病と呼ばれる疾患が数多く見つかるにつれ、一つの分解経路だけでは説明がつかなくなってきた。膜結合型と可溶化(分泌)型分子の分解に至る経路の違いや糖タンパク質と糖鎖をもたないタンパク質とのシャペロン認識の違いなど、まだよくわかっていない。また凝集体を形成してアグリソームとして核近傍に蓄積する機構とプロテオソーム分解機構との使い分けも、まぜ解明されていない。そこで、タンパク質分解過程にはいくつかの経路があり、異なるシャペロン群により制御されているという新しい視点からの解析を導入することで、実験計画を実行した。 1:細胞表面膜に局在する膜蛋白質であるジペプチジルペプチダーゼIV (DPPIV)の活性部位変異体は、生合成直後、タンパク質のフォールディングが正常に行なわれず、多量体を形成してトランスロコン(Sec61)を介して細胞質中に逆輸送され、ユビキチン化ののちプロテオゾームで分解を受ける。DPPIV変異体の膜結合型と可溶化型(分泌型)を作製し、プロテオソームタンパク質分解系に至る過程の違いを検討する為、さまざまな糖鎖合成およびトリミングの阻害剤存在下で細胞培養を行い、DPPIV変異体の分子種の変化ならびにプロテオゾーム分解に対する影響をしらべた。その結果、特にER-マンノシダーゼの阻害剤存在下、顕著な違いが見られた。DPPIV変異体(可溶化型)はERマンノシダーゼの阻害剤によりその分解が抑制されるので、マンノースを認識するレクチン様蛋白質(Edem)の関与が考えられる。しかしながら膜結合型DPPIVでは阻害剤の影響を受けないことから、Edemを介さずに分解系に入る可能性が示唆された。 2:異常タンパク質の蓄積及び凝集体形成機構の違い:培養細胞をプロテオソーム阻害剤で処理すると、細胞内にアグレゾームとよばれる変性タンパク質の塊が生じる場合ある。このアグレゾームの形成は異常タンパク質の種類により異なる凝集形態をとることが知られている。DPPIV変異体の場合、COS-1細胞に発現させた後、プロテオソーム阻害剤(エポキシミシン)で処理すると、アグレゾームの形態は見られず、核の周囲に小胞体の網目構造が凝集された。さらに時間の経過とともに、非常に大きい空胞が核の周囲から細胞質全体にわたって形成された。さらに膜面分にユビキチン化されたタンパク質が蓄積されることから、膨らんでいる空胞は、小胞体であると考えられる。これら小胞体の異常蛋白質の凝集は、細胞内移行の差によって、異なる部位で形成されるのではないかと考えている。
|