2004 Fiscal Year Annual Research Report
アクチン制御遺伝子カルポニンによる腹膜中皮細胞間接着能の亢進と癌の悪性形質抑制
Project/Area Number |
16659100
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
谷口 俊一郎 信州大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60117166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹岡 みち子 信州大学, 大学院・医学研究科, 助手 (30197280)
宮川 眞一 信州大学, 医学部, 教授 (80229806)
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Keywords | 腹膜播種 / アクチン細胞骨格 / カルポニン / 腫瘍血管 / 分子標的 / 卵巣癌 / 中皮細胞 / 宿主 |
Research Abstract |
癌転移は多段階であり関与する分子群は多数存在する。細胞骨格分子群は細胞の形態、運動、接着、さらにシグナル伝達系とも関わることが分かってきた。癌細胞のみではなく、癌細胞との相互作用の結果生じる宿主側の血管や腹膜のアクチン骨格系蛋白質の変化について着目し、癌の制御に対する新規視点の分子基盤を明らかにすることが目的である。そのために、シグナル伝達分子との相互作用やアクチン線維の安定化など、多面的な機能を有するアクチン結合蛋白質カルポニンh1(CNh1)についての機能解析を行った。 1)ヒト悪性腫瘍内あるいは近辺の血管平滑筋におけるCNh1発現の減弱、ヒト癌細胞が共存する腹膜中皮細胞におけるCNh1の発現低下を種々の系で再確認した。癌転移が生じやすいCNh1欠失マウスの血管での遺伝子発現変化を調べ、血管のカルポニンが発現低下している固形癌治療のための分子標的となる候補を検索・同定した(平成16年日本癌学会シンポジウム)。 2)ヒト卵巣癌の系において、CNh1遺伝子による卵巣癌悪性形質の抑制と免疫不全マウスにおける腹膜播種の抑制を認めた(九州大学・産婦人科との協同)。この場合、卵巣癌の造腫瘍性、運動性を抑制するが、中皮細胞においては、生存能を強化するものの低下させることなく細胞間接着を強くして、癌細胞の浸潤を抑制した(平成16年日本癌学会シンポジウム)。 上記のことから、CNh1遺伝子は癌を抑制しつつ、宿主を守ることが分かった。従来、ガン治療は副作用が難点であったが、このような多面的機能をもった分子に着目することによって、癌細胞と正常細胞でその発揮する機能を使い分け、癌を攻撃しつつ、宿主を守る治療法の可能性が考えられた。
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