2006 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエを用いた筋ジストロフィー病態モデル動物の開発と解析
Project/Area Number |
16659101
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 研一 京都大学, 化学研究所, 助手 (70270684)
|
Keywords | 筋ジストロフィー / ジストログリカン / エネルギー代謝 / カルシウムホメオスタシス / ミトコンドリア / ショウジョウバエ / 体温調節 |
Research Abstract |
これまで、dystroglycan低発現株(atsugari変異体)を用いて、筋ジストロフィーで観察される表現型の解析をおこなってきた。atsugari変異体においては低温選択性を示す他、CO_2産生量、ATP合成量ともに亢進しており、エネルギー代謝の亢進がみられた。通常ミトコンドリアの代謝はATP合成量等によって厳密にフィードバック阻害を受け、一定値に保たれているはずであるが、このatsugari変異体ではその制御が外れているものと思われた。そのような特殊な代謝状態になる原因として、ミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度が上昇し、カルシウムイオン濃度に依存して活性化される代謝酵素が活性化していることが挙げられる。そこで、今年度、エネルギー代謝に密接に関わるfat bodyならびに腸における細胞内カルシウムイオン濃度および、カルシウムイオン濃度に依存して活性化されるTCA回路の代謝酵素(ピルビン酸脱水素酵素)の活性を測定したところ、atsugari変異体では両者ともに上昇しでいることが判明した。これらのことより、atsugari変異体ではミトコンドリアのエネルギー代謝が亢進していることが判明したが、さらに、ミトコンドリア代謝阻害剤を与えるとatsugari変異体の低温選択性は正常に戻ることより、このミトコンドリアのエネルギー代謝の完進が低温選択性を引き起こしていることが明らかとなった。さらに、atsugari変異体に十分量の酸素を与えても、低温選択性は正常に戻ることから、カルシウム濃度の上昇によるミトコンドリアのエネルギー代謝の亢進により、酸素需要が増大し酸素供給が追いつかなくなった結果、過剰なエネルギー消費を掬えるため、低温を選択していることが示唆された。以上の知見は筋ジストロフィーで見られるエネルギー代謝の異常を説明しうる重要な発見であると思われる。
|