2004 Fiscal Year Annual Research Report
脳機能発達における臨界期からみた情動障害と神経ステロイドの役割に関する研究
Project/Area Number |
16659129
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松本 真知子 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助手 (70229574)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 拓 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助手 (80325563)
吉岡 充弘 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (40182729)
|
Keywords | 脳機能発達 / ストレス / 臨界期 / 情動障害 / シナプス応答 / 情動回路 / シナプス可塑性 / 神経ステロイド |
Research Abstract |
幼児期の一定期間に過度のストレスを負荷すると、脳内神経回路に機能的異常が生じるとの仮説のもとに、1)幼若期におけるストレス負荷と脳機能発達および障害との関連性を、臨界期という視点から追究し、2)関連分子としての神経ステロイドの役割を明らかにすることを目的とした。 生後2週齢および3週齢時ラットに嫌悪刺激である電撃ストレスを負荷し、成熟後の情動表出を、不安に対する行動学的応答性を指標として評価した。その結果、3週齢時に嫌悪刺激を与えたラットは、高架式十字迷路法を用いた無条件恐怖に対し、不安水準の低下が認められた。2週齢時にストレスを負荷した場合、記憶に基づいた不安評価法である文脈的恐怖条件ストレス(CFS)に対し、低不安様行動を示した。すなわち、幼若期ストレス負荷は,負荷時期に応じて成熟後のストレス誘発行動に変化を引き起こすことが明らかとなった。 一方、不安障害において扁桃体および海馬を含む大脳辺縁系を中心とした階層的情報処理機構不全が生じる可能性が指摘されている。麻酔および無麻酔成熟ラットを用い、情動表出として海馬シナプス応答性を電気生理学的に検討した。その結果、上述したCFSにより海馬CA1領域のシナプス可塑性すなわちテタヌス刺激により誘発される持続的興奮性シナプス後電位-長期増強(LTP)が抑制されることを明らかにした。以上の結果を次ページに記載した雑誌に掲載し、2004年度米国神経科学会ならびに2004年、2005年度日本薬理学会総会にて発表した。 以上より幼若期ストレス負荷時期に応じて、脳内神経回路の機能的変化が生じ、その結果として、成熟後のストレス応答性が異なる可能性が推察された。現在、2週齢および3週齢時ストレス負荷ラットを用い、海馬、扁桃体および大脳皮質前頭前野におけるシナプス機能を情動関連行動と同時に記録評価することを試みている。
|