2005 Fiscal Year Annual Research Report
脳機能発達における臨界期からみた情動障害と神経ステロイドの役割に関する研究
Project/Area Number |
16659129
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松本 真知子 北海道大学, 大学院・医学研究科, 講師 (70229574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 拓 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助手 (80325563)
吉岡 充弘 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (40182729)
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Keywords | 脳機能発達 / ストレス / 臨界期 / 情動障害 / シナプス応答 / 情動回路 / シナプス可塑性 / 神経ステロイド |
Research Abstract |
本研究は、幼児期の一定期間に過度のストレスを与えると、成長後の情動応答が変化し、うつ病、不安障害などの精神神経疾患を引き起こす要因の一つになるとの仮説に基づき、発達過程での脳内神経回路形成に焦点を当て、臨界期という視点から追究した。また性ホルモンを含むステロイドホルモンが、神経性ホルモン(神経ステロイド)として、中枢神経機能発達あるいは障害に深く関わっているとの報告に基づき、脳機能発達における情動行動応答性に雄雌差があるか否かを追究した。 生後2週齢あるいは3週齢の雄性および雌性ラットに嫌悪刺激である電撃ストレス(Foot shock;FS)を負荷し(2wFSおよび3wFS)、成長後に高架式十字迷路法(EPM)を用い、無条件恐怖に対する行動応答性を評価した。その結果、雌性ラットは雄性ラットに比べ不安水準の低下が見られた。生後3週齢時にFSを負荷した場合、雄性3wFSは低不安様行動を示したのに対し、雌性3wFSは逆に不安惹起様行動を示した。これらの行動結果により、幼若期ストレス負荷は,負荷時期に応じて成熟後のストレス誘発行動に影響を及ぼし、その応答性には性差があることが明らかになった。またストレス応答調節に重要な役割を担っている正中縫線核のセロトニン(5-HT)陽性細胞数は、雄性3wFSで減少していたこと、海馬の5-HT受容体(5-HT_<1A>受容体)を介したシナプス応答が異なることから、幼若期に与えたストレスは、5-HT神経を介した情動調節機構に影響を与えることが明らかになった。以上の結果の一部を平成17年度に発表した雑誌に掲載し、平成17年度米国神経科学会ならびに平成18年度の日本薬理学会年会にて発表した。 このように幼若期ストレスにより情動行動ならびに5-HT神経を介したシナプス応答性が変化することから、幼若期のストレス負荷時期に応じて情動神経回路の機能的変化が生じ、その結果として成熟後の行動応答性が異なる可能性が推察された。またこの行動応答には性差があることから、神経ステロイドが重要な役割を担っていることが推察され、今後5-HTと神経ステロイドとの関連性について発達過程の観点から追究していく所存である。
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