2004 Fiscal Year Annual Research Report
リエゾン精神医学が直面する倫理的問題の検討-エンパワメントの促進に向けて-
Project/Area Number |
16659136
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
河瀬 雅紀 京都ノートルダム女子大学, 人間文化学部, 教授 (70224780)
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Keywords | リエゾン精神医学 / 倫理的問題 / インフォームド・コンセント / 悪性腫瘍 / チーム医療 |
Research Abstract |
リエゾン精神医学では、身体科からの依頼により、また身体疾患のチーム医療の一員として、身体科入院中の患者の精神的問題に対処する。そこでは、患者の精神症状をはじめ、患者-家族および医療者関係、医療スタッフ間の葛藤などに関与するため、さまざまな倫理的問題に直面する。そこで、倫理的な問題についてより効果的に関わり、リエゾン診療を円滑に実践できることを目的に、日常の臨床場面でリエゾン精神科医が感じた倫理上の問題とそれへの対応についての実態を調査した。 対象は、京都府立医科大学附属病院の身体科に入院中、精神神経科リエゾン外来に照会された患者で、同病院精神神経科の協力を得て、リエゾン担当精神科医に所定の調査用紙への記入を求めた。調査期間は平成16年9月〜平成17年2月とし、現在までに平成16年9月〜12月の4ヶ月間の調査結果をまとめた。 患者総数は92名(男性47名、女性45名)であった。身体疾患の内わけは悪性腫瘍が44名で、腎臓移植が8名、糖尿病、急性薬物中毒が各2名などであった。精神医学的診断では適応障害が37名、せん妄が23名、睡眠障害が4名、うつ病が3名などであった。このうち、倫理的問題を感じた患者は13名で、悪性腫瘍が11名とそのほとんどを占めた。13例中、インフォームド・コンセントに関わる問題が8例(未告知・不十分な説明が3例、判断能力の問題が3例、家族への主導権移行が2例)で、精神症状による身体的治療・検査の阻害が2例、身体的拘束の問題が1例、鎮静の問題が1例、安楽死の問題が1例であった。以上から、悪性腫瘍患者で倫理的問題が高率に発生しインフォームド・コンセントに関わる問題が多いこと、精神症状により倫理的問題が発生していることなどが示唆された。今後は、さらに他機関のリエゾン精神科医を対象としたアンケート調査を実施し、倫理的問題に関する現状を把握していきたいと考えている。
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