2005 Fiscal Year Annual Research Report
リエゾン精神医学が直面する倫理的問題の検討-エンパワメントの促進に向て-
Project/Area Number |
16659136
|
Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
河瀬 雅紀 京都ノートルダム女子大学, 心理学部, 教授 (70224780)
|
Keywords | リエゾン精神医学 / 倫理的問題 / インフォームド・コンセント / チーム医療 / アンケート調査 / 総合病院 |
Research Abstract |
リエゾン精神医学では、身体科からの依頼により、また身体疾患のチーム医療の一員として、身体科入院中の患者の精神的問題に対処する。そこでは、患者の精神症状をはじめ、患者-家族および医療者関係、医療スタッフ間の葛藤などに関与するため、さまざまな倫理的問題に直面する。そこで、平成16年度には、日常の臨床場面でリエゾン精神科医が感じた倫理上の問題とそれへの対応についての実態を調査した。その結果、倫理的問題の内容として、インフォームド・コンセントに関わる問題(未告知や不十分な説明、判断能力の問題、家族への主導権移行など)、精神症状による身体的治療・検査の阻害、身体的拘束の問題、鎮静の問題、安楽死の問題などが挙げられた。平成17年度には、これらの調査の結果を基に調査用紙を作成し、総合病院に勤務する精神科医に倫理上の問題に関するアンケート調査を実施した。調査は全国の総合病院103施設(129名)を対象に郵送により実施し、70名の精神科医より回答を得た(回収率54%)。その結果、精神科コンサルテーション・リエゾン活動において、精神科医は倫理的葛藤を生じ得る状況をしばしば経験していることがわかった。また、「鎮静の施行時」「総室での面談などのプライバシーの問題」「精神症状による患者の判断能力の評価」「精神症状のために検査・治療が十分に行われない状況」「患者に予後が知らされていない状況」などの場面で精神科医は葛藤を感じていることが多いことがわかった。さらに常勤精神科医師数が1〜2名の病院では、「患者や家族の意向に沿わない退院・転院」で精神科医は葛藤を感じることが最も多かった。このことは、在院日数の短縮化や精神科医の多忙さなどが影響していると推測される。 今後は、リエゾン精神科医が遭遇することの多い倫理的な葛藤状況に対して、他の医療スタッフとのコミュニケーションを促進するための方策を考えていきたい。
|