2004 Fiscal Year Annual Research Report
漢方薬の利水作用はウォーターチャネルAquaporin機能制御か? -生薬のaquaporin阻害作用を利用した脳浮腫治療法の開発-
Project/Area Number |
16659174
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
宮田 健 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (90040310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
礒濱 洋一郎 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助教授 (10240920)
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Keywords | 五苓散 / aquaporin / マンガン / 脳浮腫 |
Research Abstract |
浮腫は,種々の疾患の合併症として生じる病態である.浮腫の治療には西洋医学的には高浸透圧剤や利尿薬が用いられるが,東洋医学的には利水薬が用いられる.利水薬による抗浮腫作用は,その薬理作用の特徴から利水薬は利尿薬とは異なる機序によると考えられているが,従来,利水薬の機序についてはほとんど解明されていない.一方,近年,aquaporin(AQP)と呼ばれる水チャネルが種々の浮腫形成において水の集積に重要な役割を果たしていることが分かってきた.そこで本研究は,東洋医学的な「利水薬」の作用機序の少なくとも一部がAQPの機能制御ではないかという仮説をたて,漢方方剤および生薬エキスのAQP阻害作用について検討した.まず,代表的利水薬である五苓散の作用を肺上皮細胞株を用いて調べたが,五苓散は本細胞の細胞膜水透過性を著明に低下させた.この水透過性阻害作用はAQPを封入したプロテオリポソームでも確認され,五苓散がAQP阻害作用をもつことが明らかとなった.また,五苓散によるAQP阻害作用の活性成分について追及し,本作用が主として構成生薬である蒼朮の水溶性分画に存在し,マンガンを始めとするミネラルに依存することがわかった.AQPのサブタイプごとにマンガンの阻害作用を調べると,マンガンはAQP4およびAQP5を強く阻害し,AQP1には無効であった.脳で高レベルに発現するAQP4は脳浮腫治療の標的分子と考えられているが,阻害物質がなく,マンガンは初のAQP4阻害物質となった.さらに,五苓散のAQP阻害作用について,マウスの急性水中毒により惹起した脳浮腫モデルを用いてin vivoで評価したが,五苓散はマウスの生存率を著明に増加させた.以上の成績は,利水作用をもつ漢方薬の薬理作用にAQP阻害作用が少なくとも一部関与することを示すとともに,含有ミネラルの重要性を示す画期的なデータである.
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