2004 Fiscal Year Annual Research Report
放射光を用いた心筋クロスブリッジ動態の実時間解析法の確立と臨床応用
Project/Area Number |
16659210
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
白井 幹康 広島国際大学, 保健医療学部, 教授 (70162758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅 弘之 国立循環器病センター研究所, 所長 (90014117)
永谷 憲歳 国立循環器病センター研究所, 再生医療部, 室長 (60372116)
西浦 直亀 国立循環器病センター研究所, 心臓生理部, 室員 (70132933)
ピアーソン ジェームズ 国立循環器病センター研究所, 心臓生理部, 研究員
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Keywords | 心筋収縮タンパク / クロスブリッジ動態 / 生体内拍動心臓 / 放射光 / X線回折法 / ナノテクノロジー / ラット |
Research Abstract |
本年度は、1)丸ごと心臓における最適X線回折像の取得法の確立と2)正常及び病的心臓におけるクロスブリッジの収縮・拡張中の挙動、特に心室圧-容積関係との対応の究明を目指した。 大型放射光施設SPring-8 (BL40XU)で実験を行った。準単色放射光(波長:0.08nm、幅:0.2x0.2mm、X線エネルギー15keV)をラット左心室に当て、心筋の小角散乱をX線イメージインテンシファイアと組み合わせた高速CCDカメラで記録した。1)では、丸ごと心臓の左室のX線回折像を、ほぼ一定した走行の単層心筋からなる単離乳頭筋の回折像と比較した。その結果、麻酔下、開胸ラットでは、左心室前壁(心尖から約1cm心基部よりの局所心筋の外層心筋)に、心臓の長軸に対しほぼ70〜90°(ラットの左肩から右足に抜ける方向)に放射光を当てると、外層筋に限局したX線回折像が得られ、単離乳頭筋でみられる典型的な2つの回折ピークが再現性良く記録できることが分かった。より深い心筋層(中層から内層)に照射すると回折像が複雑化し、回折ピークの同定が難しくなることも分かった。走向の異なる筋層から同時に回折像が記録されるためと考えられた。 2)では、麻酔下の正常及び虚血心ラットにおいて、胸壁を部分的に取り去り、コンダクタンスカテーテルとマイクロマノメータを左室に直接挿入し、左室の圧-容積関係とX線回折像の同時記録を行った。その結果、回折像には2つの顕著な回折ピーク、(1,0)反射と(1,1)反射があり、心筋収縮・拡張によってそれらの強度は変化することが分かった。このデータから心筋運動の両反射強度への影響を取り除くため、(1,0)反射と(1,1)反射の強度比(ミオシンとアクチン間の質量移動を反映)を解析した。すると、強度比は収縮期には有意に減少、拡張期には増加を示し、ミオシン頭部のアクチンへの移動をみごとに反映した。また、この強度比の変化は、β-adrenoreceptor刺激で有意に増加、虚血時には有意に低下あるいはほぼ消失することも分かった。さらに、収縮期の初期には,クロスブリッジが形成されても心筋が縮まない期間があることも明らかとなった(Circulation 109,2983-2986,2004)。 以上の結果から、今回、解析に成功した回折ピークの強度比は、生体内拍動心の収縮機能の新たなナノレベル評価法として有用であると考えられた。
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