Research Abstract |
小型霊長類コモンマーモセットのES細胞培養系において初期分化にかかる遺伝子群の検出を試みている.まずランダム発現制御ライブラリー未導入の条件下で,継代培養中にES細胞のいくつかが血球系もしくは神経細胞への分化を思わせる形質変化を示すかどうかを追跡している.培養5日から20日の間に胚様体形成後,赤血球やニューロンへの分化を思わせる,色調,形態の変化を認めるコロニーの発生を認め,これらについて血球系,神経系の初期分化において発現するとされる一連の遺伝子群の同定を進めている.神経系の分化を思わせる細胞群は,ニューロンの形態を思わせる様な紡錘形の細胞体様構造から細胞質の一部が軸索様に細長く伸びる細胞である上に,他の紡錘形細胞に軸索様構造物がanchoringしているように伺える像があるが,コロニー形成能が低く,当該細胞群のみを単離解析するには至っていない.一方,血球系分化方向を伺わせる細胞群では,CD34,GATA2,c-kitなどの発現を確認しているが,これ以外の遺伝子について,これまでヒトや他の霊長類,げっ歯類などから得られた知見から,すでに発現するとされている遺伝子群の発現は必ずしも確認できておらず,現行のES細胞培養条件下での分化は不完全なもので,さらにいくつかの遺伝子群が発現することがin vivoでの分化の再現に必要であると考えられた.これは,初期分化段階で発現するとされる遺伝子群の発現を更に上流で制御している上位の遺伝子発現を誘導することで達成される可能性があると考えられる.
|