2004 Fiscal Year Annual Research Report
内分泌かく乱物質による精子形成不全と協調するタンパク質DJ-1
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16659431
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
有賀 早苗 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (90184283)
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Keywords | DJ-1 / パーキンソン病 / 酸化ストレス / 神経細胞死 / ミトコンドリア / ビスフェノールA / 内分泌かく乱化学物質 / 転写調節 |
Research Abstract |
DJ-1は特に精巣、精子、脳で発現が高い。DJ-1はOrnidazolにより不妊化したヒトおよびラット精子中で発現低下し、受精を抗DJ-1抗体が阻害することからDJ-1が生殖・受精機能に関わることが明かとなった。一方、DJ-1は神経変性疾患であるパーキンソン病の原因遺伝子(PARK7)としても報告された。不妊化や神経変性疾患は環境要因などにより生ずる酸化ストレスが大きな要因と示唆され、酸化ストレス防御因子としてのDJ-1の機能が推定された。そこで、中枢神経や生殖器官に影響を及ぼすことが知られている内分泌かく乱化学物質は重要な環境要因として考えられる。本年度、酸化・ERストレス等を与えることが報告されているビスフェノールA(BPA)暴露での精子、脳におけるDJ-1に対する影響を検討した。成熟雄マウス(BL/6、6週齢)を用いた実験で、BPAを経口投与した結果、精子・脳においてDJ-1が上昇した。また、培養細胞(GC-1,Neuro2a)を使用した実験で、BPAが活性酸素量を増加し、DJ-1が自己酸化されることにより活性酸素を除去し、活性酸素が誘導する細胞死に抵抗性を与えることを明かとした。また、DJ-1はこれらの細胞では特に細胞質、なかでもそのほとんどがミトコンドリアでの局在が観察される。これは、ミトコンドリアの機能障害が神経変性疾患と深く関連が示唆されていることから、BPA曝露とcomplex Iとの関連性を更に解析し、DJ-1はミトコンドリアのComplex 1サブユニットNDUFA4に結合し、DJ-1ノックダウン細胞ではComplex 1活性が著しく低下している事から、DJ-1はComplex 1活性の正の制御因子であることが明らかとなった。
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