2005 Fiscal Year Annual Research Report
唾液中の抗菌物質をレポーター分子とした免疫不全性疾患の病態診断法の確立
Project/Area Number |
16659505
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
前田 伸子 鶴見大学, 歯学部, 教授 (10148067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 朋子 鶴見大学, 歯学部, 講師 (50233101)
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Keywords | 唾液抗菌タンパク質 / 免疫不全 / HIV感染症 |
Research Abstract |
免疫不全症候群の代表的な疾患であるHIV感染症の病態と唾液抗菌タンパク質濃度との関係および口腔カンジダ検出との関係を検討した。HIV感染症の病態・病気は主に血中ウィルスRNAコピー数とCD4値判定するが、血液検査は患者に与える苦痛・負担が大きく、変動が鋭敏でないため変化を検出できた時には手遅れの状態になっていることも少なくない。そこで非侵襲的検査材料となりうる唾液に注目し、HIV感染者(107名、平均37.2歳)の唾液抗菌タンパク質の変動を同年代の健康成人(99名、平均36.5歳)と比較し、HIV感染症者の病期はCD4陽性細胞数を基準にした米国CDC分類に基づき3カテゴリーに分類し、群内での比較を行った。さらに、免疫抑制・不全状態では口腔カンジダ症の発症が経験的に知られているので、原因微生物であるカンジダを検出し唾液抗菌タンパク質濃度と病態との関係も検討した。 以下に試験項目・方法と得られた結果を示す。 方法:ELISA法(lysozyme検出はMicrococcus lysodeikticusを用いた比濁法)により、唾液中のSLPI, lactoferrin, lysozyme, sIgA, MPO濃度を測定。カンジダは舌背スワブを選択培地であるクロモアガー・カンジダ培地へ塗抹、培養し、CFU測定。 結果:HIV感染者は同年代健康成人に比べ明らかにカンジダ検出率・菌数が高く、CDCカテゴリー1,2,と重篤になるにつれ増加した。一方、すべての抗菌タンパク質濃度はカテゴリー1より2の方が高値を示したが、カテゴリー3になると逆に低下する傾向が認められた。さらに健常者群ではカンジダ陽性者は陰性者に比較しすべての抗菌タンパク質の濃度が上昇していたが、HIV群のSLPI, lactoferrinでは上昇が見られず、MPOは逆に減少していた。ドライマウス患者群(74名、平均65歳)と比較すると、唾液流量はHIV群と同程度の低下にもかかわらず、逆にLactoferrin濃度は上昇していた。 考察:以上の結果から、健常者ではカンジダ感染に抵抗するために各抗菌タンパク質濃度が上昇するが、免疫不全状態では獲得免疫のみならず自然免疫の抗菌タンパク質濃度も低下していることが明らかとなった。したがって、唾液抗菌タンパク質濃度の変動を測定することで、HIV病期の予測ができる可目性が示唆された。現在、免疫不全状態のマウスモデルでの検証を進めている。
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