| Research Abstract |
【目的】本研究の目的は「タッチ」の効果を科学的に評価し,癒し技法として看護に応用する方法を開発することである。本研究の「タッチ」とは,整体等の領域で活用されている手をあてる行為で,短時間で習得可能な方法である。【研究方法】1)被験者は,研究の趣旨に賛同した20〜40歳代の健康な男女5名であった。2)タッチの施行者は,研究者の誘導にしたがって,腹臥位になった被施行者の呼吸を感じとりながら,背部に柔らかく手を置いた。被験者が,施行者と被施行者を相互に行った。3)実験手順は,(1)心理的測定(POMS:感情プロフィール検査),(2)安静5分,(3)呼吸法5分,(4)タッチ10分,(5)心理的測定(POMS)と主観的反応の自由記述とした。4)生理的測定は上記(2)〜(4)の間,施行者・被施行者の心電図,呼吸,皮膚電気抵抗,局所皮膚温度4点(手中指先・手掌・背部・足底部)を測定した。【結果】ここでは皮膚温度,POMS,主観的反応を報告する。(1)皮膚温度は,手中指先で顕著に変化した。呼吸法実施中は,被験者5組中9人が0.4〜4.3℃の範囲で上昇した(開始時32.8±1.5℃,ピークは2〜4分後)。「タッチ」実施中は,被施行者5人全員が0.6〜4.4℃の範囲で上昇(開始時32.4±2.4℃,ピークは2〜8分後),また施行者5人は2.7〜5.0℃の範囲で上昇した(開始時32.3±0.9℃,ピークは4〜9分後)。(2)POMSの実験前後の比較では,被施行者において不安-緊張得点の減少が3人,疲労得点の減少が4人にあった。(3)主観的反応の内容は,被施行者側がポカポカと暖かくリラックスしたであったのに対し,施行者側は前半相手と呼吸が合うと気持ちよかったが後半は姿勢がつらく疲れたであった。【考察】今回の方法による「タッチ」には,呼吸法実施時と類似の末梢皮膚温度の上昇が見られており,リラクセーション反応の生じた可能性が示唆された。
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