2005 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の"持てる力"を活用した生活援助技術の開発に関する研究
Project/Area Number |
16659627
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
松波 美紀 岐阜大学, 医学部, 助教授 (40252150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 亥智江 島根県立看護短期大学, 看護学科, 講師 (70262780)
武藤 吉徳 岐阜大学, 医学部, 教授 (80190859)
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Keywords | 自然な動き / 日常生活援助技術 / 体位変換技術 / キネステティクの概念 |
Research Abstract |
人は日常生活の活動を行うためにいろいろな動きを組み合わせている。活動の中でいちばん基本的な「体位のとり方:仰臥位から側臥位、仰臥位から端座位、座位から立位」について、4名の研究協力者(被験者)に自然に動いてもらい、その動き方を左、右、そして足の3方向よりVTR撮影し、画像分析を行った。また、その分析結果を基に研究者は被験者9名に体位変換の援助を実施した。そして被験者が感じた感覚について情報を収集し、体位変換の援助方法と結びつけて整理した。 画像分析から、どの被験者も頭部、上半身(上肢と胸郭部)、下半身(骨盤部と下肢)の各部分が同時に動き始めることはなかった。一つの部分が動き始め、その動きが0.6〜0.8秒の差をおいて次の部分の動きにつながっていくことが分かった。各部分の動く順序や動く角度は被験者により異なったが、最初の動き始めには被験者自身の「動こう」という意識的な動きがあり、被験者それぞれの好きな位置(角度)に移動された。特に仰臥位から側臥位への動きの頭部や上肢、座位から立位への動きの足部の動き始めや動いた位置などに明らかであった。このことは、援助時の「被験者自身が介助者の方を見る」ことができるような説明の必要性および頭部、上肢、下肢の準備の重要性につながっていた。このような援助は、被験者の「"自分自身も動こう"という意識が生まれた」という感想にもつながった。また、一つの動きがきっかけとなり、その後は流動的に生み出される動きもあった。それは、仰臥位から側臥位への動きでの足底がマトレスを押すことにより股関節が伸び、骨盤部が回転してくる動き、端座位になるときに下肢をマトレスから垂らすことにより上半身が起きようとしてくる動き、立位になるときに前傾姿勢になると殿部があがってくる動きなどである。これらの動きにつながる動きは、援助にも必ず取り入れなければならない動きである。そうすることにより、被験者は「自分で動いたように感じた」という感想が述べられた。 人間本来の自然な動きは、その人自身が持っている力であり、それを活用することで援助はとても円滑になるという示唆は得ることができたが、現段階では当事者間の主観とキネステティクの概念の解釈にとどまっている。また、高齢者への適応については文献的考察にとどまっている。今後も実証的な検証を重ねていきたいと考える。
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