2004 Fiscal Year Annual Research Report
分子表面積近似による溶媒和自由エネルギーの高精度・高速計算方法の開発
Project/Area Number |
16680013
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
升屋 正人 鹿児島大学, 学術情報基盤センター, 助教授 (60305159)
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Keywords | 溶媒和自由エネルギー / 溶媒接触表面積 / 分子表面積・体積 / タンパク質の立体構造予測 / SASA法 |
Research Abstract |
遺伝子上の核酸配列の情報に基づき細胞内で合成されたアミノ酸配列はそのままでは機能を持たない.立体構造を形成してはじめて機能が発現する.ところがこの立体構造形成機構についてはまだ十分に明らかにされていない.この解明を目的とした計算機シミュレーションにおいてな溶媒分子を考慮すること,すなわち,溶媒和自由エネルギーの計算が必要となる.溶媒和自由エネルギーの計算には時間がかかるため,高速に計算する方法が求められてきた. 高速に溶媒和自由エネルギーを求める方法の一つに,分子表面積を用いた近似解法(SASA法)がある.これは,分子に含まれる各原子を原子団に分類し,原子団ごとの溶媒接触表面積にパラメータを乗じたものの総和として溶媒和自由エネルギーを求める方法である.SASA法では表面積を高速に計算できれば溶媒和自由エネルギーを高速に計算できる.表面積の高速計算には,原子の中心の座標を用いて単純化した数式により表面積を近似的に求める方法が用いられることが多い.ところが,SASA法ではわずかしか露出しない場合もある個々の原子の溶媒接触表面積を用いるため,この方法では十分な精度が得られない.一方,分子を構成する原子の表面上に点を分布させ,分子の表面に存在する点を数えることで表面積と体積を同時に計算できる数値的解法もある.こちらは,点の数を多くすることで高い精度を得ることができるが,計算に時間がかかるという問題があった. そこで本研究では,表面積・体積の数値的解法に対して,新しい高速化アルゴリズムを開発するとともに,原子表面に均等に点を分布させる方法を用いて精度の向上を図った,表面積・体積・溶媒和自由エネルギーの高速計算プログラム,NSOLを開発した.このプログラムにより,これまでにない速度と精度での表面積・体積・溶媒和自由エネルギーの計算が実現されることになる.
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