2004 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子ベクターとしてのブロック共重合体とDNAとの複合体形成の物理化学的特性解析
Project/Area Number |
16680019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 裕一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (00322678)
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Keywords | 高分子ミセル / 遺伝子デリバリー / ブロック共重合体 / ナノカプセル / DNA / 生体適合性 / ポリエチレングリコール |
Research Abstract |
本研究は、人工遺伝子ベクターとして設計されたブロック共重合体であるポリエチレングリコール-ポリ(L-リシン)(PEG-PLL)と治療用遺伝子が搭載されるプラスミドDNA(pDNA)との複合体形成機構に関する特性解析を行うことを目的とする。計画初年度は、原子間力顕微鏡(AFM)による高次構造解析及び、滴定型等温熱分析装置(ITC)によるPEG-PLLのpDNAへの結合挙動の解析を行った。以下に詳細を述べる。 1)PEG-PLL/pDNA複合体の高次構造解析では、複合体形成時の混合比(N/P比)を系統的に変化させ、生じた複合体の構造を観察した。N/P比の増大に伴い、pDNAの構造はドーナツ状あるいはロッド状の凝縮構造へと変化するが、化学量論的なN/P比より低い領域より凝縮DNAが出現し、この挙動は蛍光消光試験の結果と一致した。N/P比をさらに上昇させると、より凝縮度の高い球状凝縮体が観察された。これらは、無細胞系の遺伝子発現評価で発現低下がみられ、凝縮状態と遺伝子発現量との相関が示唆された。 2)ITCによる分析では、低分子の凝縮剤によるDNA凝縮を参照しつつ、PEG-PLLによるpDNA凝縮の系に関する測定・解析を実施した。PEG-PLL/pDNAの系でも低分子凝縮剤による場合と類似する滴定曲線が得られ、いずれの場合も滴定曲線は2成分に分離可能であったが、各々の熱力学的パラメータを最適化するには、既知のtwo-site bindingモデルによるフィッティングが適用できないことが判明した。既知のモデルでは、最初の結合イベントにおける結合定数が2つ目のイベントの結合定数よりも低くなることを前提とする点が、DNA凝縮に対応しないことが判り、新規のモデルを開発した。このモデルにより求められた熱力学的パラメータは、低分子及び高分子いずれのDNA凝縮にも適用可能であることが判明した。
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