2004 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロフォーカスX線CTを用いた木造文化財の非破壊年輪計測に関する基礎的研究
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16680028
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
大河内 隆之 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (50372181)
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Keywords | マイクロフォーカスX線CT / 解像度 / 断層画像 / 木造文化財 / 木彫像 / 非破壊年輪年代測定 / 年輪年代 / 画像計測 |
Research Abstract |
4月から6月にかけては、マイクロフォーカスX線CT装置導入に向けての仕様策定、ならびにそのための予備実験を中心に研究を行った。本研究ではマイクロフォーカスX線CT装置の解像度がきわめて重要であるため、木片試料を用いてのX線管球やイメージインテンシファイア等の部品性能評価、および撮影条件が画質に与える影響について検討を行った。 7月から9月にかけては、本研究用に特注した研究所にマイクロフォーカスX線CT装置(島津製作所SMX-100CT-D)を導入し、試験的に運用を開始した。この過程で、高解像の詳細な年輪断層画像を連続的に撮影して年輪計測用の画像を構成する技術を確立するとともに、年輪断層画像からコンピュータ上で年輪幅を画像計測するコンピュータソフトを開発した。これら技術の確立により、非破壊年輪年代測定技術が実用化されたといえる。さらに、男神像(像高27cm)、龍頭(全長21cm)などの木彫像を対象試料として、非破壊年輪年代測定実験を行った。前者からは1555年、後者からは1611年の年輪年代を得ることができ、木造文化財への応用が可能であることを確認した。 上記研究成果を9月に「文化財の解析と保存への新しいアプローチ」シンポジウム(於:早稲田大学)、ならびにEuroDendro 2004(於:ドイツレンツブルク)で学会発表するとともに、報道発表を行った。非破壊年輪年代測定技術の実用化は世界的にも例がなく、これらの発表は衆目を集めた。また、本研究を特集した『埋蔵文化財ニュース118号』を刊行した。さらに、本研究中に開発した技術部分を特許出願した。 木造文化財から鮮明な年輪断層画像を得るためには、ジオメトリや管電圧などの適切な撮影条件の選択がきわめて重要である。10月からは、装置の運用を本格的に開始するとともに、より大型の文化財試料を扱うことも視野に入れ、オペレーション技術の習熟に務めた。この過程で得られたオペレーションノウハウは、当研究所の貴重な財産である。
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