2005 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロフォーカスX線CTを用いた木造文化財の非破壊年輪計測に関する基礎的研究
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16680028
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
大河内 隆之 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (50372181)
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Keywords | マイクロフォーカスX線CT / 断層画像 / 木造文化財 / 非破壊年輪年代測定 / 画像計測 / 年輪年代 / ミズナラ / ブナ |
Research Abstract |
報告者は、2004年11月から2005年9月にかけて、文部科学省の海外派遣在外研究員としてアリゾナ大学年輪研究所にて、年輪年代学の研究を行った。したがって、本科学研究費補助金によって昨年度に奈良文化財研究所に設置したマイクロフォーカスX線CT装置を報告者みずから操作することができず、本年度4月から9月の滞米期間中は研究協力者の協力を仰いで研究を進めた。 昨年度は、日本の木造文化財の主要樹種である針葉樹を重点的に研究したのに対し、今年度前半期(報告者滞米期間中)は、広葉樹を対象に基礎的な研究を行った。植物解剖学的な視点から環孔材のミズナラ、散孔材のブナをマイクロフォーカスX線CT装置で断層撮影して実験を行った。研究協力者による実験が中心になったにもかかわらず、昨年度のヒノキなどを対象にした研究で問題点の洗い出しやオペレーションノウハウの蓄積ができていたので、研究は順調に進行し、マイクロフォーカスX線CT装置による非破壊年輪年代測定の技術は針葉樹のみならず環孔材や散孔材にも適用可能であることが実験によって確認された。研究成果は、報告者帰国後ただちにまとめられ、2005年10月にイタリアで開催された国際学会EuroDendro2005、ならびに2005年11月に京都で開催された国際学会6th Pacific regional Wood anatomy Conferenceにおいて口頭発表された。ヨーロッパにおける年輪年代学ではナラやブナが主要研究対象であるため、発表後、海外の研究者から技術内容についての照会が寄せられている。また、報告者らは研究内容について論文を執筆し、2006年3月現在、学術誌に投稿中である。 本年度12月から3月にかけては、木彫像などの日本の木造文化財試料の非破壊年輪年代測定実現に向けて、技術的な検討を重ねた。装置の取扱可能限界である直径50cm程度の木彫像を対象に実験を行い、非破壊年輪年代測定の基本的な技術課題は十分に解決され、報告者が本研究で課題とした技術開発が実用域に達していることを確認した。
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