2004 Fiscal Year Annual Research Report
安定同位体情報による大気中有機酸類の循環解析法の確立
Project/Area Number |
16681001
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 桂太 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助手 (70323780)
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Keywords | マイクロ固層抽出法 / GC / IRMS / 大気中酢酸 / δ^<13>C値 / 自動車排ガス |
Research Abstract |
本課題における本年度の研究目的は、1.簡便且つ迅速な大気中酢酸の安定炭素同位体比(δ^<13>C値)計測法を確立し、その方法を用いて2.大気中酢酸の発生源である自動車排ガスおよび焼却炉排ガス(特に植物燃焼)を分析する、ことである。 1.に関しては、マイクロ固層抽出法(SPME)とガスクロマトグラフ・同位体比質量分析法(GC/IRMS)を組み合わせた簡便・迅速な分析法を確立した。この方法を用いることで、水溶液として捕集した大気中酢酸(50μM)のδ^<13>C値を、測定時間2時間、測定誤差±0.5‰で計測することが可能となった。2.に関しては、自動車排ガス中の酢酸のδ^<13>C値を-20.2‰(n=1)と計測することができた。また、C3植物(稲わら)およびC4植物(ススキ)を燃焼したガス中の酢酸のδ^<13>C値を、それぞれ-25.0±0.5‰(n=5)および-12.9±0.6‰(n=4)と計測することができた。これらは燃材植物のδ^<13>C値(-26.7±0.04‰(稲わら)および-12.4±0.03‰(ススキ))と関係していることがわかった。このように、酢酸が発生源ごとに固有のδ^<13>C値を持ちうること、発生源における基質のδ^<13>C値と関連することが示唆され、大気中酢酸の循環解析に利用できる可能性を得た。 さらに、主要幹線道路(国道246号)沿いで採取した大気中酢酸のδ^<13>C値を計測したところ-27.7±0.1‰(n=2)であり、本研究で得られた自動車排ガス由来の酢酸と異なるδ^<13>C値を示したことから、幹線道路沿いの大気試料においては自動車排ガス由来酢酸の影響が少ないことが炭素同位体比の視点から示唆され、大気中酢酸同位体情報の循環解析に対する有効性を例証することができた。
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