2006 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸海底湧水機構の海洋環境への影響評価及び評価システムの構築
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16681004
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
張 勁 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 助教授 (20301822)
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Keywords | 沿岸海底湧水 / 富山モデル / 水収支 / 栄養塩供給 / 沿岸生態系 / パターン化 / 東シナ海 / GEOTRACES |
Research Abstract |
三年目の今年度は,研究のまとめとして,過去2年間で新たに発見された問題を解決しつつ,近年開始した東アジア沿岸域海底湧水研究の結果と比較し,地球規模での議論に発展させ,海底湧水機構の評価システム構築を目的としている。その成果を下記に要約する。 a).富山湾モデルの確立:湾内へ流出する海底湧水は標高800〜1200mの山間部に起源を置き,10〜20年をかけて海底から湧き出ている;その湧出量は世界的にも屈指であり,河川水の25-60%にも及び,これによる溶存態リンと窒素の供給量は河川水のそれに匹敵し,沿岸海域の基礎生産量に大きく貢献していることを実証した。また,日本地球化学会誌「地球化学」に沿岸海底湧水の科学特集号を出版すると同時に,一般への教育用番組作成にも協力している(NHKスペシャル『神秘の海富山湾〜海の中までアルプスがつづく〜』;『NHKサイエンスZERO〜不思議の海富山湾〜』)。 b).富山湾モデルを利用し,利尻島・大槌湾・駿河湾において海底湧水による栄養塩供給の実態を明らかにし,海外においても台湾初の海底湧水の発見と流量計測に成功している。また,陸棚面積が世界トップレベルの東シナ海において,沿岸海底湧水の探査と量的評価に成功した。 c).パターン化:各々湧出海域における地質条件と湧出メカニズムによって,3種類:(1)扇状地型(2)火山島型(3)珊瑚礁型に分けられ,湧出量及び湧出メカニズム評価システムの骨組みが整った。 d).2005年より始動し世界20ヵ国以上が参加しているSCOR大型国際海洋調査研究計画GEOTRACESに立案から携わり,沿岸海底湧水を重要な研究課題の一つに取り上げることに多いに貢献した。現在運営委員会の委員としてアジアGEOTRACESの推進に力を入れ,平成20年春に出版予定の日本海洋学会英文誌JOにGEOTRACES特集号のゲストエデイターとして総括をしつつ,特に沿岸海底湧水のまとめ(日本・韓国・台湾等からの関係報文は五つに上る)など,その地球規模データベースの構築と評価システム確立の第一歩を踏み出した。
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