2004 Fiscal Year Annual Research Report
フラーレンの骨格変換を機軸とする内包フラーレンの有機合成
Project/Area Number |
16681008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 助手 (40314273)
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Keywords | フラーレン / 開口フラーレン / 水素内包フラーレン / 有機合成 / C60 / C70 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
金属あるいは小分子を内包したフラーレン類の製造法は、従来アーク放電などの低効率かつ制御困難な手段に依存しており、物性研究の大きな制約となっている。我々は今回、水素分子を内包した新しいフラーレンH2@C60を、初めて有機化学的に合成することに成功した。我々はこれまでに、C60の骨格表面に硫黄を含む13員環の開口部を設けることによって、その骨格内部に水素分子1個を100%の効率で導入できることを報告している。本研究では、水素分子を内包したフラーレン誘導体の13員環の開口部を、開口部の硫黄原子の酸化ならびに光化学的な脱離により、12員環に縮小させた。次に低原子価チタンを用いるカルボニル基のカップリング反応により、その開口部を8員環に縮小させた。ここまでの過程では内包された水素分子の放出は全く観測されなかった。最後に熱分解反応により、水素分子を内包したフラーレンC60を合成した。この結果、空のC60から3段階の有機化学反応により開口部を設け、小分子を導入し、4段階の有機化学反応で開口部を修復することによる内包フラーレンの有機合成法を確立させた。 得られた水素内包C60は、空のC60に極めて類似したUV-Vis, IR, NMRスペクトルを与えた。この結果、内包された水素分子と外側のフラーレン骨格との相互作用は極めて小さいものであることが明らかとなった。さらに、電気化学測定により、水素内包C60は、4段階までの還元と一段階の酸化を受け、その電位は空のC60とほぼ同一であることも分かった。一方、内包された水素分子の1H NMRの化学シフトは外側のフラーレン骨格の構造変化を鋭敏に反映し、極めて高磁場にシグナルを与えるため、フラーレン骨格の電子状態のよいプローブとして利用可能であることを初めて示した。
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[Journal Article] Helium Entry and Escape through a Chemically Opened Window in a Fullerene2005
Author(s)
Stanisky, C.M., Cross, R.J., Saunders, M., Murata, M., Murata, Y., Komatsu, K.
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Journal Title
J.Am.Chem.Soc. 127
Pages: 299-302
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[Journal Article] Solid-State NMR Spectroscopy of Molecular Hydrogen Trapped Inside an Open-Cage Fullerene2004
Author(s)
Carravetta, M., Murata, Y., Murata, M., Heinmaa, I., Stern, R., Tontcheva A., Samoson, A., Rubin, Y., Komatsu, K., Levitt, M.
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Journal Title
J.Am.Chem.Soc. 126
Pages: 4092-4093
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[Journal Article] Controlled Molecular Orientation in an Adlayer of a Supramolecular Assembly Consisting of an Open-Cage C60 Derivative and Zn(II) Octaethylporphyrin on Au(111)2004
Author(s)
Yoshimoto, S., Tsutsumi, E., Honda, Y., Murata, Y., Murata, M., Komatsu, K., Ito, O., Itaya, K.
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Journal Title
Angew.Chem.Int.Ed. 43
Pages: 3044-3047
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