2006 Fiscal Year Annual Research Report
フラーレンの骨格変換を機軸とする内包フラーレンの有機合成
Project/Area Number |
16681008
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 助教授 (40314273)
|
Keywords | フラーレン / 内包 / 開口 / 小分子 / 分子手術 / 水素 |
Research Abstract |
中空のフラーレン骨格内部に小分子・原子・金属イオン等が閉じこめられた内包フラーレンは従来法では純粋な物質の大量合成が困難である。本研究では、比較的安価に得られる空のフラーレンを原料として、フラーレン骨格に穴を開け、そこから小分子や金属イオンを導入した後、穴を閉じるという、いわば「分子手術」とも言える手法によって、新しい内包フラーレンを有機化学的手法により合成し、新規物性の発現を目指した。 すなわち、開口C_<60>誘導体の内部に重水素分子をほぼ定量的に導入し、重水素分子を内包させたままで開口部を修復することによってD_2@C_<60>を合成した。また、開口C_<60>誘導体に液相にて高圧のヘリウムガスを作用させ、素早く開口部を縮小することによって、ヘリウム原子を内包したC_<60>を合成することができた。反応直後のヘリウム内包率は40%であったが、HPLCにより内包率80%まで向上させることができた。また、フラーレン骨格外側の^1H NMRスペクトルを測定することによって、内包ヘリウムとフラーレン骨格との分子間相互作用が存在することを明らかにした。一方、開口C_<60>へのH_2,HD, D_2分子の導入の平衡定数ならびに放出の速度論的パラメーターを決定することにより、D_2分子がH_2分子よりも内包されやすいことを明らかにした。さらに、水素分子を内包したC_<60>カチオンの発生を確認した。さらに、13員環開口部にセレン原子をもつC_<60>誘導体を合成した。水素分子を内部に挿入し、放出速度測定によって開口部の大きさを評価したところ、硫黄類縁体に比べて若干開口部が大きくなっていることが明らかとなった。また、アミン類との反応を検討したところ、水分子が内部に導入可能な大きさの開口部構築が可能であることが分かった。
|