2005 Fiscal Year Annual Research Report
マウス精子および体細胞の室温保存法に関する基礎的な研究
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16681020
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
日下部 博一 旭川医科大学, 医学部, 教務職員 (60344579)
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Keywords | マウス / 精子 / 体細胞 / 室温保存 |
Research Abstract |
新しいマウス精子凍結乾燥用溶液として、修正型ETBS(50mM EGTA、100mM Tris-HCl(pH7.4))を考案した。修正型ETBSは、従来法で使用していたETBSから塩化ナトリウムを除き、Tris-HClの濃度を高くした組成である。また、従来法と大きく異なる点は、凍結乾燥処理を行うまでの4日から7日間、精子を修正型ETBSで前処理(プレインキュベーション、4℃または25℃)することにより、凍結乾燥精子の染色体正常率が70-90%と高くなることである。逆に前処理時間を充分にとらないと、染色体正常率は極端に低いという変わった現象がみられる(前処理時間なしで16%)。修正型ETBSの精子懸濁液を4℃でプレインキュベーションした後に凍結乾燥し、更に4℃で4ヶ月まで保存した場合、加水後の凍結乾燥精子をマウス未受精卵に注入すると、そのほとんどの卵が活性化した。また、受精卵の染色体正常率は85%〜95%とかなり高く、これは非凍結の新鮮精子のレベル(90%)であった。また、同条件において、胚盤胞発生率が80%を超えた。このことは、従来法が60-70%程度であったことと比べれば、大きな改善点のひとつである。更に、偽妊娠マウスの卵管に移植した初期胚のうち、60%が妊娠14日後の正常胎仔に発生した。この高い頻度は非凍結の新鮮精子の場合のそれ(50-70%程度)とほぼ同レベルを示すものであった。凍結乾燥精子を室温保存した場合、本法では従来法の4℃保存と同レベルの頻度(30-40%)で胎仔が得られた。更に、本法によって室温(25℃)で1年間保存した精子から、妊娠19日後(出産直前)の正常胎仔を得た。このような長い期間室温に曝された凍結乾燥精子から胎仔を得たのは、世界的にも例がない。今後、修正型ETBSを用いるプレインキュベーション法の他の系統や種への適用が期待される。 ※なお、平成17年度において実施した当該研究の研究成果の公表を見合わせる必要が生じたため、その理由及び差し控え期間等を記入した調書を添付する。
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