2005 Fiscal Year Annual Research Report
新型赤外線高分散分光器による高赤方偏移における銀河間物質の進化の研究
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16684001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 尚人 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (50280566)
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Keywords | クェーサー吸収線系 / 銀河間物質 / 星間物質 / 赤外線 / 近赤外 / 分光 / 高分散分光 / イマージョングレーティング |
Research Abstract |
本年度はまず、ドイツにおける将来の超大型望遠鏡の観測装置についての国際会議において、本研究で開発中の近赤外高分散分光器WINEREDのコンセプトと詳細を発表し、このような新コンセプトが将来の大型望遠鏡でも重要であることが強く認識され、現在製作中の本機は重要なプロトタイプでもあるとの位置付けを得た。その結果、世界の多数の観測所から、本装置の取り付けのオファーを得ることができたが、とくにスペインのラパルマ天文台にあるイギリスのウィリアムハーシェル4m望遠鏡との交渉をすすめ、WINEREDをとりつけて共同研究をすすめることに合意した。現在は、この望遠鏡にとりつけるための技術的検討をすすめている。 前年度に終了した光学詳細設計をもとに、レンズやコリメータ放物面鏡等の光学部品の製作をすすめた。現在は、短波長の近赤外線観測をするにあたって重要となる熱カットフィルターの検討を行っている。また、波長分解能10万を実現するための主要光学部品であるセレン化亜鉛製のイマージョングレーティングのR&Dを理研、名古屋大学とともにすすめた。その結果、この脆性材料について延性加工条件をもとめることに成功し、世界初となる近赤外波長域での実用的なイマージョングレーティングの研削による製作に目処を得た。 機械系では、カメラ光学系を収納する液体窒素冷却のクライオスタットの設計・製作を終了した。現在は、残りのレンズマウントの設計・製作をすすめている。 電気系では、汎用の近赤外線読み出しシステムの開発をすすめ、最初の試験システムの製作を終了した。現在、ノイズ試験をMUX(試験用の検出器)を用いてすすめている。 本研究の予備研究となる観測的研究をすばる望遠鏡の近赤外線装置IRCSを用いてすすめ、とくに、赤外線波長を生かして、高赤方偏移(z>1)の吸収線について初めてナトリウムのNaID吸収線を検出することに成功した。この吸収線は、銀河形成に密接に関係する低温ガスのプローブとして知られているが、本研究で製作中の高分散分光器により、このような重要な吸収線の速度成分毎の元素組成など本質的な物理情報を得ることができる。
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[Journal Article] Instrument Design of Warm Infrared Echelle Spectrograph (WINERED)2006
Author(s)
Yasui, C., Ikeda, Y., Kondo, S., Motohara, K., Kobayashi, N.
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Journal Title
研究会集録(Instrumentation for Extremely Large Telescope, Eds. Tom Herbst, Wolfgang Gassler, May 2005, Germany)
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[Journal Article] Studies of QSO Absorption Systems with Near-infrared High Resolution Spectroscopy2006
Author(s)
Kondo, S., Kobayashi, N., Yasui, C., Motohara, K., Ikeda, Y.
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Journal Title
研究会集録(Instrumentation for Extremely Large Telescope, Eds. Tom Herbst, Wolfgang Gassler, May 2005, Germany)