2004 Fiscal Year Annual Research Report
X線スペックル散乱による相転移ダイナクスの空間的・時間的相関の解明
Project/Area Number |
16684008
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中尾 裕則 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70321536)
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Keywords | 共鳴X線散乱 / 放射光 / コヒーレント散乱 / スペックル / 相転移 / 電荷秩序 / 価数揺動 |
Research Abstract |
近年注目を集めている数多くの機能性物質は、エネルギー的に近い基底状態が競合しているため、極めて外場に敏感で多彩な物性が出現する。この競合する基底状態の外場や励起に対する応答としての相の空間的・時間的な発展の相転移ダイナミクスを明らかにすることは、機能発現の起源を明らかにするという基礎科学としての重要性だけでなく、その後のデバイスなどの応用の上で必要不可欠な情報となる。これまでに、放射光X線の持っ特徴を利用した共鳴X線散乱(RXS)手法により、d電子系・f電子系での物性の鍵を握る電荷・軌道秩序状態を明らかにしてきたが、この手法を発展させコヒーレントなX線と組み合わせた共鳴・非共鳴スペックル散乱実験から、電荷・軌道秩序状態の空間的・時間的相関の発展の観測を通して、ミクロな相互作用の起源、さらには機能発現のメカニズムを明らかにするのが本研究の目的である。 本年度は、次の2つの事を行った。 1.スペックル散乱観測技術を確立するため、SPring-8の原研ビームラインBL22XUにてコヒーレント光の取り出し、および評価を行った。スリットの条件等の問題が出たが、光の質としては十分に使えることがわかり、今後の光学系周りの整備の方針が立った。また、4軸回折計とCCDカメラを組み合わせたスペックル散乱測定システム構築のためのソフトウェアの整備、および標準試料での予備実験を行った。その結果、CCDカメラを利用した一通りの実験が可能となった。ただし、早い時間変化の測定には現状のソフトでは不可能であることも判明した。今後、ソフトおよびハードの面からの改良を検討する必要がある。 2.価数揺動系物質Yb4As3における、電荷秩序状態から価数揺動状態までのYb価数状態の変化の様子をYbのL3吸収端近傍でのRXSにより明らかにすることに成功した。特に、これまで熱的価数揺動状態と呼ばれていた相において、低温相の電荷秩序相の短距離秩序状態と高温相の2相共存状態になっていることを初めて明らかにした。
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Research Products
(3 results)