2005 Fiscal Year Annual Research Report
X線スペックル散乱による相転移ダイナクスの空間的・時間的相関の解明
Project/Area Number |
16684008
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中尾 裕則 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70321536)
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Keywords | 共鳴X線散乱法 / 放射光 / コヒーレント散乱 / スペックル / 相転移 / 電荷秩序 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度までに確立させたコヒーレント光の取り出し技術・CCDカメラによるスペックル散乱観測技術を価数揺動系等に適用し、相転移ダイナミクスの研究を行うため大きく次の3つの事を行った。 1.X線計測装置の改善:共鳴・非共鳴スペックル散乱では、微弱な信号を捕らえる必要がある。そこで、X線検出器として、新たにシリコンドリフトチェンバーを導入し、試料自身からのノイズである蛍光X線の除去を目指すと共に、高い最大計数を生かしS/Nの良いデータ取得を目指した。また、CCDカメラの画像読み取り速度改善のため、CCDカメラコントロールユニットを増設した。これらにより、昨年度に比べ約1桁弱い信号の取得が可能となった。 2.価数揺動物質Yb_4As_3の電荷状態の空間的・時間的相関の解明:昨年度明らかにした電荷秩序転移温度より高温側でのYb価数の揺動状態を共鳴X線散乱手法により詳細に測定し、短距離秩序状態が転移温度に向かい徐々に成長していく様子を明らかにした。その結果、電荷の空間的な相関が転移温度に向かって成長することを明らかにした。このことは、熱的価数揺動状態といわれる物質共通の状態と現在のところ期待している。さらに、この電荷揺らぎの時間相関を明らかにするため、本研究の主となる共鳴・非共鳴スペックル散乱を測定した。その結果、基本反射を用い転移温度前後での長距離秩序状態に発達したドメイン分布を反映したスペックル散乱の観測に成功した。さらに短距離秩序化した価数揺動状態の時間相関をこのスペックル散乱を通じて測定することを試みた。しかしながら、静的な散乱強度に上乗せされる揺らぎ成分は、現在の観測精度の範囲内で観測することはできなかった。次に価数揺動状態を直接的に反映する散漫散乱に、スペックル散乱手法を適用した。微弱な散乱強度であるため、1.で向上させた観測技術により測定したものの現在のところスペックル散乱そのものが観測できていない。 3.研究開始時の予想より共鳴・非共鳴スペックル散乱強度が微弱なため、上述のように相転移に特徴的なスペックル散乱の観測に成功していない。また、現在利用しているSPring-8のビームライン(BL22XU)のコヒーレントなX線強度を増強することは現状では難しい。そこで、ミラー集光システムを導入し、試料の微小領域にその強度を集中することにより実効的にスペックル散乱強度の増強を図ることとした。そこで、当ビームラインにミラー集光システムを導入することとし、来年度の運用を目指している。
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Research Products
(6 results)