2005 Fiscal Year Annual Research Report
有機物質への10GPa級超高圧印加による新電子相の創生
Project/Area Number |
16684009
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
谷口 弘三 埼玉大学, 理学部, 助教授 (50323374)
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Keywords | 超高圧 / 有機伝導体 / 超伝導 |
Research Abstract |
2003年に小生を中心とする研究グループは、有機絶縁体に超高圧を印加するという手法で新規超伝導体を発見し、超伝導の世界記録を更新した。最初に発見した物質は、β'-(BEDT-TTF)_2ICl_2という層状有機物質であったが、本年度は、関連物質であるβ'-(BEDT-TTF)_2AuCl_2の超高圧下物性研究を展開し、比較研究を行った。AuCl_2塩はICl_2塩と同様の結晶構造と同様の常圧下物性を持つにもかかわらず、10GPaといった超高圧下まだ金属化されないという結果を得た。この結果をさまざまな角度から考察し論文にまとめた(この論文はJPSJ注目論文に選ばれた)。また、現在、さらに高い超伝導を実現させるべく、BEDT-TTF分子と類似のBEDSe-TTF分子からなるβ'-型物質に注目し合成を開始している。このうちβ'-(BEDSe-TTF)_2ICl_2については合成に成功し、8GPaの超高圧下で高温部の金属化に成功した。さらに高い圧力印加で超伝導の出現が期待できる。また、べつの有機塩についても合成を開始している。 以上のような物質は、分子のダイマー構造により、バンド充填率は1/2と見なせるわけであり、圧力印加はバンド幅制御によって金属化をめざそうとするものである。本年度は、1/2からわずかにずれたバンド充填率を持つ物質に注目し研究を行った。κ-(BEDT-TTF)_4Hg_<2.78>Cl_8の圧力印加実験により、大変興味深い結果が得られた。この物質の超伝導は圧力印加によって一旦消失(もしくは転移温度が極めてさがる)し、高圧下で再び再復帰した。現在、さらなる解析を行っている。 最後に、本研究の出発点となった成果、"Superconductivity at 14.2K in Layered Organics under Extreme Pressure" J.Phys.Soc.Jpn.72 468-471(2003)が第11回JPSJ論文賞に内定していることを言及しておきたい。
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