2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16684011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小嶋 健児 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (60302759)
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Keywords | 銅酸化物 / スピン・電荷秩序 / ストライプ / 光学伝導度 / ミュオンスピン緩和 / 磁束コア |
Research Abstract |
本年度は、「光学ホール係数」を測定するための装置、高精度偏光解析装置を作り上げ、それを用いて、電荷・スピン分離/自己組織化状態として名高い、「ストライプ」状態を持つ、La系銅酸化物(LSCO)を測定した。この測定によって、新たに得られた見地は、 (1)ストライプを静的に安定化させた物質(NdドープLSCO)の光学反射率は、遠赤外領域(5〜100meV)で、高々6Tの磁場によって、5%程度低下し、単純なエネルギースケールの議論では、理解できない程度の大きな磁場依存性を持つこと。この結果は、磁場によってストライプ形成下での電気伝導が大きな影響を受けることを示唆する。 (2)ストライプが動的揺らぎにとどまる物質(LSCO)の光学反射率の磁場依存性は、(1)よりはるかに小さい。このことは、中性子回折などの実験で、スピン自由度において観測されている磁場誘起ストライプ形成は、電荷自由度から見れば、相変わらず動的な揺らぎが大きく残っていることを示唆する。 (3)超伝導体の「光学ホール係数」測定は、超伝導状態に磁場をかけるため、磁束を導入することが不可避である。この、「導入された磁束コア」という観点から、上記LSCO系に関して、光学測定と相補的なミュオンスピン緩和(μSR)測定を行った。それによると、磁場の関数として、磁束コアは領域を拡大し、あたかも超伝導と競合する相が成長するようである。したがって、中性子・μSRという磁気的プローブの結果は、互いに呼応し、電気的プローブの結果(2)と一線を画している。 また、本年度は、スピン・電荷結合/分離がより明快に現れる、擬1次元スピン系を測定し、この現象の理論とも直接的に比較しうる結果を得て、スピン・電荷分離に対する理解が、擬1次元系という単純な系では、より深まった。
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Research Products
(5 results)