2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16684012
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中辻 知 京都大学, 大学院・理学研究科, 講師 (70362431)
|
Keywords | モット絶縁体 / 軌道秩序 / スピン液体 / パイクロア酸化物 / ホッピング伝導 |
Research Abstract |
我々の開発したCa_<2-x>Sr_xRuO_4は、軌道の秩序によりさまざまな基底状態をとる多重バンド型モット転移系の典型例である。この系のモット絶縁体領域の抵抗、磁性、比熱の精密測定を行った。その結果を理論的に解析することにより、一般に乱れたモット絶縁体内のホッピング伝導は、電子間のクーロン反発のエネルギースケール、すなわち、0.1eVから1eVというスケールの障壁を越えて行われるということを明からにした。これは、従来型の半導体の1meVから10meVのそれとは、大きさが数桁異なる。この正しいエネルギースケールの導入により、乱れのあるモット絶縁体の抵抗の温度依存性はR=R_0exp(T_0/T)^<0.5>で表されることを示した。 一方、パイロクロア格子上の局在モーメントがつくる幾何学的にフラストレートした磁性について、近年、盛んに研究が進んでいる。そのなかでも低温まで磁気秩序を示さない遍歴磁性体の数少ない系の一つが我々の開発したPr_2Ir_2O_7である。我々はパイロクロア型酸化Pr_2Ir_2O_7の単結晶育成に初めて成功し、物性研究所、榊原研究室と共同でFaraday法により低温磁化を測定した。まず、磁化の異方性の測定から、この系のfモーメントはイジング異方性を持ち、10K以下では、およそ、2.3μ_Bのスピンが約1.5Kのエネルギースケールの反強磁性相関を持って揺らいでいることがわかった。さらに、低温直流磁化測定の結果、100mKまでfモーメントは局在したまま、磁気秩序を示さないことが示された。これらのことを考え合わせると、モーメントが各四面体でall-in, all-outの相関を持ったスピン液体状態が実現していること可能性が強い。また、低温での磁気抵抗の結果は、f電子とIrの5dの遍歴電子に比較的大きなカップリングがあることを示している。
|
Research Products
(6 results)