2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16685003
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
甲賀 研一郎 岡山大学, 理学部, 助教授 (10315020)
|
Keywords | 疎水効果 / 疎水性相互作用 / 水 / カーボンナノチューブ / 相転移 / シミュレーション / 格子模型 |
Research Abstract |
1.カーボンナノチューブ内に拘束された水の相挙動を分子動力学法に基づき温度、圧力、直径を変化させて計算し、液体-固体および固体-固体相平衡曲面の構築を試みた。大規模な計算の一部が終了した段階であり、全体像をつかむには至っていないが、いくつか新たな知見が得られた。第一に、ナノチューブの直径が10Å以下の系に関しても液体固体間の一次相転移が観測された。直径の減少に伴い融点が低下し、ある直径以下では相転移が存在し得ないという通説が、極端に小さい直径に関しては成り立たないことをこれは例示するものである。第二に、ある直径に関して、1GPa付近およびそれ以上の高圧領域においてはねじれ構造をもつ新規なアイスナノチューブが生成することが明らかになった。これはナノスケールの準一次元空間での多様な固体相の存在を新たに示唆するものである。 2.疎水効果が発現する温度・圧力範囲を解明するために、解析的に解くことの可能な格子模型を提案した。このモデルは以前我々が提案し研究を行った疎水性水和のモデルを拡張したものであり、圧力効果を調べることができる。このモデルに基づく研究から次のようなことが明らかになった。第一に、定圧条件下で溶媒和自由エネルギーが極大を示す温度T_1は、疎水性溶質間の平均力ポテンシャルが極小となる温度T_2よりも高温側にあることが示された。第二に、圧力の関数として温度T_1およびT_2を調べ、圧力の増加とともに両温度がほぼ線形に低下することがわかった。第三に、温度圧力平面で溶媒和自由エネルギーと溶質間平均力ポテンシャルとの間を調べたところ、曲線T_2(P)の低温領域において単一の線形関係が成立することがわかった。これは以前我々が指摘した線形関係が温度圧力平面内の低温低圧領域で普遍的に成立することを示唆するものである。
|