2004 Fiscal Year Annual Research Report
有機典型金属-アミン型触媒を用いる分子の集合化と新しい触媒作用の創製
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16685010
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
斎藤 進 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90273268)
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Keywords | 有機典型金属-アミン型触 / 分子集合化体 / 水 / 金属クラスター化合物 / 酸-塩基相互作用 / 水素結合 / 配位結合 / 触媒効率 |
Research Abstract |
金属酸化物は水の金属等価体である。従って、水を含有する有機典型金属化合物に触媒作用を賦与することができれば、原理的には水のプロトンは周期律表にあるすべての金属に置換可能であり、新型金属触媒創製へと即座に連動する。すなわち、最低でも金属三核中心からなる金属触媒へと容易に誘導できるという利点を持つ。このような新しい発想を機軸とし有機典型金属-アミン型触媒と水の集合体の合成研究を開始した。最初に、酸と塩基を併せ持つ新しい有機ボラン-アミン-水型クラスター触媒の開発に成功した。この触媒のもつ酸と塩基の連続構造が様々なエノール種(エノラート種ではない)の程よい安定化に寄与することで、その生成と反応を可能にすることを見い出した。特にニトロアルドール型反応において顕著な触媒活性を示した。触媒回転数(TON)は1000回転に達する。また各種同位体化合物を用いる実験によって、ニトロアルドール反応における触媒の作用機序をほぼ明らかに出来た。まず、この水クラスター化合物が含有する水分子(H_2O)を重水分子(D_2O)に変えるだけで、1.5倍程度反応速度が上がることを確認した(k_H/k_D<1)。また本触媒は、D_2O分子よりもH_2O分子をより強く含有・保持することが明かとなった。H_2O(あるいはD_2O)分子が水素結合を介してニトロメタンと相互作用し、この分子を活性化したと推測される。さらに、ニトロメタン-d_3を用いることで、k_H/k_D<1になる2次的同位体効果を更に観察した。これらの結果から反応の律速段階は、触媒がニトロメタンと相互作用する平衡過程と、エノール種とアルデヒドが分子間で炭素-炭素結合を生成する過程、これら2段階からなるといえる。これら重要な知見を統合すると、ボラン中心は反応に必要な相互作用形成に実質的には関わっておらず、水素結合のみが駆動力となり反応を進行させることが示唆された。
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Research Products
(1 results)