2005 Fiscal Year Annual Research Report
(η^3-ベンジル)パラジウム錯体中間体を経由する新規有機合成反応の開拓
Project/Area Number |
16685011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
桑野 良一 九州大学, 大学院理学研究院, 助教授 (20273477)
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Keywords | パラジウム触媒 / 求核置換反応 / ベンジルエステル / (η^3-ベンジル)パラジウム / ベンジルスルホン / 鈴木-宮浦反応 / 交差カップリング / 有機ホウ素化合物 |
Research Abstract |
(η^3-ベンジル)パラジウム中間体は多くの有機合成反応の鍵中間体となり得ると期待されてきたが、効率良く発生させる方法が未知だったため、この分野の研究は大きく遅れていた。申請者等は(η^3-ベンジル)パラジウム中間体を経由して進行すると考えられるベンジルエステル類のベンジル位置換反応の開発に世界で初めて成功した。そこで本研究では、申請者等によって開かれた(η^3-ベンジル)パラジウム中間体が関与する有機合成反応の分野をさらに発展させるべく、以下の研究を行った。 1.スルフィン酸塩を求核剤とするベンジル位置換反応の開発 これまでに開発したパラジウム触媒による炭酸ベンジル類への求核置換反応を基盤にして、スルフィン酸ナトリウム類を求核剤とするベンジルエステル類のベンジル位求核置換反応の開発を試みた。その結果、スルフィン酸塩の有機溶媒に対する溶解性からDMSOのような非プロトン性極性溶媒を用いる必要があったものの、二座ホスフィン配位子DPEphosと[Pd(η^3-C_3H_5)Cl]_2から反応系中で調製される触媒を用いることにより、目的とするスルフィン酸塩のベンジル化が効率よく進行し、様々なベンジルスルホン類が高収率で得られることを見いだした。本法は高度に官能基化された基質の反応にも有用であり、trienomycin類の合成中間体の合成に応用可能であることを示した。 2.酢酸ベンジル類のベンジル位求核置換反応の開発 前年度に開発した炭酸ベンジル類の鈴木-宮浦交差カップリングをよりユーザーフレンドリーなものに発展させるため、酢酸ベンジル類を基質として利用することに挑戦した。その結果、第三級アルコールを溶媒とすることにより、目的の反応が高収率で進行することを見いだした。この現象を利用して、様々な求核剤による酢酸ベンジル類の求核置換反応について検討し、反応を進行させることに成功した。
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