Research Abstract |
本研究の目的は,例えば千島海溝部の北米大陸プレートと太平洋プレート境界に代表されるプレート境界の破壊をシミュレートするための「プレート境界の力学条件および,境界条件を満たす」実験方法を確立することである.初年度である本年度は,プレート境界と同様の境界条件を満たすき裂の導入手法を検討し,地震模擬のための予備的な実験として内部の分岐き裂の状態を観察することが研究目的である. 本年度は,新たにデジタルマイクロスコープ・電子顕微鏡・セラミックス(岩石)用精密切断機を購入し研究を行った.まず,精密切断機を用いて試験片を切断し,内部に発生したき裂の観察を行なうことに成功した.ここで重要な点は,精密な切断により,これまでは十分にわからなかったき裂形状の全体像を正確に把握できたことである.デジタルマイクロスコープは,電子顕微鏡観察(微視的観察)前の予備的観察に用いたが,特に研摩した試験片内部に存在する閉口き裂の検出・観察に有効であることが確認できた.また,電子顕微鏡は,デジタルマイクロスコープの観察により明らかになった閉口き裂の状態を高倍率で調べるために用い,その詳細な観察に成功した. さらに予き裂の導入とともに,転がり疲労現象を利用して試験片内のき裂を接触応力にょって進展・分岐させる実験も行った.ここで得られた結果は,次のとおりである.1)接触応力下のき裂は,内部でせん断応力により分岐し,自由表面に平行に進展する.2)この主き裂は,小さな分岐き裂をともなって進展する.3)主き裂は,圧縮応力下でも局所的に有効なせん断応力によって進展する.また,岩石に近いセラミックスのほか,鋼材についても分岐き裂の導入と観察に成功した.(この結果はすべて研究成果として学術論文に発表済である.(印刷中を含む.)) これにより,本年度の研究目的である,1)き裂の導入手法の確立,2)き裂に圧縮応力下でせん断応力を負荷し分岐き裂を発生させること,に成功した.
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