Research Abstract |
今年度の研究成果は,(i)局所電場電位(Local field potential ; LFP)の多点計測からラットの聴皮質での音圧情報の時空間的な表現方法を明らかにしたこと,(ii)発火電位とLFPとを多点で同時計測できる実験系を構築したこと,(iii)音刺激を与えながら,聴皮質へ電気刺激を与えると,聴皮質の機能構造を再構築できることを示したことである. 聴皮質の任意の部位は,特定の周波数の刺激音に選択的に反応する.この周波数を特徴周波数と呼ぶ.聴皮質上で,純音に対するLFPを多点同時計測したところ,反応の大きさ・潜時は,特徴周波数の音に対しては,音圧の絶対値ではなく,音圧の変化率に完全に依存することが分かった.一方,非特徴周波数の音に対しては,音圧の絶対値・変化率の両方に依存する.また,聴皮質の特定の領野では,音圧に応じて規則的に反応部位が変化し,空間的に音圧変化率軸が存在することを示した.さらに,時間的,および,空間的な情報表現から,音圧の絶対値と変化率とを区別できることを示した. 微小電極アレイを聴皮質の500μmの深さに刺入し,発火電位とLFP、とを安定に同時計測できる実験系を構築した,同アレイには,タングステンを電極に,シリコンゴムを基板に用いた. 神経系は経験に応じて情報処理方法を可塑的に変えるが,この変化は,神経細胞が活動電位を出す時刻とある刺激に関連するシナプス入力時刻との相対的な時間差に依存する.上記実験系を用いて,特定の刺激音を提示したときの聴皮質への入力時刻を予測して,その時刻の前後に電気刺激を与え,活動電位を発生させた.その結果,入力時刻の数ms後に電気刺激を与えると,神経反応はその刺激音に対して増強するが,数ms前に入力があると反応は低下するがわかった.この現象を用いて,聴皮質の任意の部位で,LFPの特徴周波数を変化させることができた.
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