Research Abstract |
本研究は,RC造耐震壁を対象に,(1)耐震壁の面内に分布する局所的な力(理想的には応力),とくにせん断力と軸力の平面的な分布を捉え,破壊過程との関係を解明すること,加えて,(2)局所的な力の分布に基づき動的な効果(曲げ,せん断強度の上昇,靭性能の低下など)を詳細に説明すること,(3)以上の結果に基づき耐震壁の耐力低下域を含む合理的な数値解析モデルを堤示すること,を目的とする実験的,解析的研究である. 平成16年度は,1970年以前に建設された6層程度のRC造建物を構成する連層耐震壁の脚部を模擬した縮尺1/3の試験体を設計,製作し,静的破壊実験を実施した.試験体には,従来用いられてきたような試験区間の上下を剛なスタブで拘束するタイプ(従来型試験体)と,危険断面位置での局所的なせん断力・軸力を計測するため基礎を4分割したタイプ(力計測試験体)の2種類を計画した.後者の試験体では,せん断型の2軸ロードセル4台を用いて力の計測を行った.実験結果より,(1)従来型試験体と力計測試験体はともに曲げ降伏後あるいは曲げ降伏機構形成途中にせん断破壊し,計画時の破壊機構を実現できたこと,(2)力計測試験体の破壊経過,破壊機構,荷重-変形関係,ひび割れ幅などは従来型試験体の実験結果を概ね再現しており,基礎を分割した影響は大きくなく,力の計測方法が妥当であること,(3)力計測試験体より,RC造耐震壁は損傷が大きくなるに従って耐震壁面内に作用するせん断力と軸力が圧縮側に推移すること,(4)圧縮側柱近傍のせん断力負担割合は,終局時には全せん断力の7割程度にまで達すること,などを確認した.
|