Research Abstract |
本研究は,耐震壁構造を対象に,壁の面内に作用する局所的な力を実験的に捉えることによって,その破壊過程や終局域の性能を解明すること,これらを定量的に評価する方法を提示ことなどを目的とする,実験的,解析的研究である. 平成17年度は,平成16年度に実施したRC造耐震壁の実験結果について引き続き検討するとともに,解析的な評価を加えた.実験結果より,耐震壁の損傷が進行するに従って危険断面に作用するせん断力が圧縮側に推移することは昨年度報告した通りであるが,さらにせん断力の重心位置が断面中立軸位置や圧縮域の重心位置と密接な関係があることを確認した.上記の関係は耐震壁の性能とくに曲げによる損傷の影響を考慮したせん断性能を評価するための重要な指標となり得ることから,耐震壁の性能を単純な数値解析モデルで評価できる可能性を指摘した.しかしながら,本モデルの構築には実験結果より得られた危険断面位置での局所力に加え,耐震壁全体の力の分布を評価する必要があるため,有限要素解析を実施し実験データを補足するデータを作成することを計画した.現在までに本解析により昨年度の実験を概ね再現できることを確認しているが,データの収集途中であり来年度も継続する.一方,昨年度の実験より,既存のせん断型ロードセルの剛性が試験体の剛性と比較して必ずしも十分でなかった結果を受け,圧縮引張型ロードセルを複数組み合わせることで合理的に高剛性を確保できる荷重検出システムの設計,製作を行った.本システムは来年度の実験に適用することを計画している.また,先述の有限要素解析より比較的実験再現性のよい解析データが得られたことを受け,来年度はRC造耐震壁に加えて,より複雑な挙動を示すことが予想されるRC造枠組組積造壁に研究対象を拡大し,本構造の局所的な力の計測実験を実施する計画に変更した.これに伴い,本年度は来年度の試験体を設計,製作するとともに,力の計測実験の妥当性を検証するための基礎データを実験的に収集した.
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