Research Abstract |
斜め堆積手法を用いて,動物の小腸内壁の微絨毛組織を模倣した表面ナノロッド構造を有するInN薄膜を作製し,エレクトロクロミック特性を評価した.本年度は,反応性イオンプレーティング法,反応性スパッタリング法,および窒素ラジカル支援真空蒸着法に対して斜め堆積手法を導入し,InN薄膜を作製した.イオンプレーティング法,スパッタリング法ともに,明確なナノロッド構造を有するウルツ鉱型InN多結晶膜を作製でき,平面堆積膜に比べて,1桁近い色変化量の増大が達成できた.また,斜め堆積におけるShadowing効果をさらに高める目的で,窒素ラジカル支援真空蒸着法による成膜装置を新たに製作した.ステンレス製真空チャンバーは,内径約400mm,奥行300mmの円筒形で,ターボ分子ポンプにより10^<-6>Pa台まで真空排気できる.このチャンバー側面に,活性窒素ラジカル源を取り付け,下方からのIn蒸気と,右方からの窒素ラジカルの同時照射により,InN薄膜の堆積を行った.X線光電子分光によって,In原子の窒化は確認できたが,X線回折プロファイルにおけるウルツ鉱型InNの回折ライン強度が低く,結晶性に対する成膜条件の最適化が必要である.結晶性が低く,優先成長方向が存在しないため,斜め堆積に伴うナノギャップ構造は確認できるが,微細構造の制御は困難である.窒素ラジカル支援真空蒸着法では,イオンプレーティング法やスパッタリング法と比較すると,膜表面が窒素プラズマに直接曝されないため,膜表面上に入射したIn原子およびN原子が,結晶構造を形成するための十分なエネルギーを得ていないためと考えられる.そこで次年度は,基板温度の制御および窒素イオンの導入によって,InN薄膜の結晶性の向上を図る.
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