2004 Fiscal Year Annual Research Report
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16686050
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
志村 拓也 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋工学センター, 研究員 (80359140)
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Keywords | 位相共役波 / 時間反転波 / 水中音響 / ディジタル通信 / 音響通信 / マルチパス / 適応フィルタ / 低周波音源 |
Research Abstract |
位相共役波とは、ある点音源から発した音波をアレイで受信し、その受信信号を時間軸上で反転した信号を、逆にアレイから発信すると、元の音源の位置(=焦点)に音波が収束するという現象である。この位相共役波による収束は、従来のビームフォーミングによる絞りとは異なり、反射波や屈折波が集まって、特定の点に対して音波が収束するため、その収速度は非常に高く、水中音響技術への数多くの応用が考えられ、その一つに水平方向の長距離音響通信が挙げられる。 本年度は、まず、この位相共役波を通信に利用するための方式、特に、アレイから点に対する通信の方式を検討した。その方法は、まず、点から発したパルスをアレイで受信して、その受信信号を時間反転し、その"時間反転パルス"に変調したディジタル信号のデータ列を載せて送信すれば、位相共役波によって信号が収束し、焦点において所望の信号が受信できるというものである。さらに、この受信信号を適応フィルタで処理すれば、収束し切れなかったノイズ状の信号が除かれ、さらに復調結果が良くなるということが分かった。言い換えると、従来であれば通信を阻害する反射波や屈折波を、位相共役波によって出来る限り利用した後、利用仕切れなかった信号を適応フィルタが取り除くことで相乗効果が得られるという方法を確立することが出来た。 この位相共役波による通信のシミュレーションを、深海域の各種環境条件で行い、従来の方法である適応フィルタ単独の場合よりも格段に良好な復調結果が得られること、音速分布が一様でなくても通信路が確保できること、深海域において水深よりも短いアレイでも通信が行えること、アレイと焦点が同じ深度になくても収束させることが出来ること、などの性質を明らかにすることが出来た。 また、来年度以降に予定している実海域試験で使用する低周波音源と受波器を製作した。低周波音源は、米国EAI社製のPS-500を深海用に改造した。その性能試験を、米国海軍の試験設備(Naval Undersea Warfare Center : NUWC, Underwater Sound Reference Division : USRD)にて行い、送波レベル186dB以上、中心周波数500Hz、帯域幅100Hz、無指向性、などの要求性能を満たしていることを確認した。また、海洋研究開発機構の高圧水槽において加圧試験を行い、耐圧性能を確認した。受波器は、米国Hitech Inc.社製のHTI-90を購入した。 他に、実海域試験で使用する、AD/DA、ボードPC、プリアンプ、及び、上記の低周波音源用パワーアンプなどからなる送受信装置を製作し、陸上での作動試験を行った。さらに耐圧容器(既存品)、送受信装置のフレーム、係留系の整備・製作を行った。
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Research Products
(5 results)