2005 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子MafAを指標に膵島β細胞の血糖感知システムの実体にせまる
Project/Area Number |
16689019
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
片岡 浩介 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授 (20262074)
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Keywords | 転写制御因子 / シグナル伝達 / 遺伝子発現制御 |
Research Abstract |
膵島β細胞に特異的に発現するインスリン遺伝子の転写はグルコース(血糖値)に応答して上昇するが、膵島β細胞がグルコースの濃度を感知するメカニズムはよくわかっていない。本研究課題では、膵島β細胞に特異的に発現する転写制御因子MafAの活性が、細胞外液中のグルコース濃度によって変化するメカニズムを生化学的に解析することにより、膵島β細胞の血糖感知システムの実体が何であるのかをつきとめることを目的としている。 前年度までの研究により、β細胞由来細胞株の核内においてMafAタンパク質が高度にリン酸化を受けていることをあきらかにし、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動上の移動度の違いで判別されるリン酸化部位7カ所を同定した。また、そのうちの4カ所をリン酸化するキナーゼ1種(仮称キナーゼ1)を同定した。本年度は、このキナーゼ1によるMafAのリン酸化の意義とその活性制御機構を詳細に解明することを試みた。これらのリン酸化部位であるセリン、スレオニン残基をアラニンに置換した変異型MafAを構築し、その活性やグルコース応答を調べたところ、これらの部位のリン酸化は、細胞外液のグルコース濃度の変化に応じたMafAタンパク質の分解制御(タンパク質の安定性)に必須であることが判明した。また、MafAタンパク質はプロテアソーム系を介して分解を受けることをあきらかにした。したがって、この制御機構をさらに詳細に調べることにより、当初の目的である血糖感知システムにせまることが可能であると考えられる。 また、MafAの上記以外の3カ所をリン酸化するキナーゼの同定も平行して試みたが、現在までに、最低でも3種類のキナーゼがこれらの部位をリン酸化することをつきとめており、MafAタンパク質の機能が複数のキナーゼによって複雑に制御がされている可能性が考えられ、より詳細な解析を継続中である。
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