2006 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子MafAを指標に膵島β細胞の血糖感知システムの実体にせまる
Project/Area Number |
16689019
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
片岡 浩介 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授 (20262074)
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Keywords | 転写制御因子 / シグナル伝達 / 遺伝子発現制御 |
Research Abstract |
膵島β細胞でのみ発現するインスリン遺伝子の転写はグルコース(血糖値)に応答して上昇するが、細胞がグルコースの濃度を感知するメカニズムはよくわかっていない。本研究課題では、膵島β細胞に特異的に発現する転写制御因子MafAの活性が、グルコース濃度によって変化するメカニズムを生化学的に解析することにより、膵島β細胞の血糖感知システムの実体が何であるのかをつきとめることを目的としている。 前年度までに、MafAタンパク質はβ細胞由来細胞株の核内で高度にリン酸化を受けており、これらのリン酸化は、細胞外液のグルコース濃度の変化に応じたMafAタンパク質の分解制御(タンパク質の安定性)に必須であることをあきらかにしてきた。さらに、MafAタンパク質はプロテアソーム系を介して分解を受けることをあきらかにした。本年度はまず、MafAタンパク質が、通常のプロテアソームによる分解に必要なユビキチン化をおそらく受けないことをあきらかにし、一般的ではない特殊なタンパク質分解経路を介して分解されることをあきらかにした。一方で、ユビキチン様のタンパク質SUMO(small ubiquitin-like modifier)によってβ細胞内のMafAの32番目のリジン残基(32Lys)が共有結合により修飾されていることを見いだした。32Lysの変異体を作製することによって、SUMO修飾によってMafAタンパク質のDNA結合能やタンパク質安定性はほとんど変化しないが、転写活性化能は抑制されることを見いだした。SUMO化修飾を受けない変異型MafAタンパク質は、インスリン遺伝子プロモーターの活性化能のみならず、他のMaf関連タンパク質の標的遺伝子の転写活性化能や、inviVOにおける内在性標的遺伝子(水晶体におけるδクリスタリン遺伝子など)の発現誘導能も亢進していることをあきらかにし、SUMO化によるMafAタンパク質活性調節のメカニズムを解明した。
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