Research Abstract |
与えられた大量の入出力データに内在する写像関係を推定する手法として,入力空間を複数の定義域に分割し,各定義域内の入力に対応する出力値の推定値を,各定義域とそれに対応する値域に含まれる入出力データに対して線形写像を当てはめることによって,入出力データ間の非線形写像関係を複数の線形写像で表現する方法(線形回帰木と呼ぶ)がある.これまでの方法では,出力データはスカラー値しか扱えない,汎化性能を追求するあまり複雑な手続き,パラメータ調整が必要となっていた. そこで,本研究では,出力変数はスカラー量のみを扱うだけでなくベクトル量も扱えるように改良し,さらに,推定される線形写像の汎化性を向上させるため,画像の領域分割処理として有名なSplit-and-Mergeアルゴリズムに基づいた処理も行い,許容される推定誤差に関するパラメータを与えるのみで写像が推定できるようにしたソフトウェアを開発した.本研究では,データ空間の分割様式が12分木により表現されているので,新たな入力が与えられた場合に,与えられた入力がどの部分空間に属するのかを高速に求めることが可能になっている.また,各部分領域内のデータに対して求められた回帰係数,平均値は,2分木の終端ノードに格納されているので,新たな入力に対して2分木を探索することで,高速に推定出力を計算することができる.このように2分木構造のtreeが構築されるので、本アルゴリズムをPaLM-treeと呼び,また,構築される木構造のこともPaLM-treeと呼んでいる. PaLM-treeの有効性を確認するために,シミュレーションによる関数禁じ性能の検証,本手法の応用実施例として,複数の画像から抽出された顔画像から顔方向を推定する問題,車輪型移動ロボットの動的制御問題へ応用などを行い,従来手法に比べて良好な結果が得られることを確認した.これらにより,線形回帰木を適用する際にその使用に関する事前知識が必要なくなり,線形回帰木を容易に使用することが可能になり,様々な分野への適用が可能になると考えられる.また,PaLM-treeの持つ問題点を克服する手法として,非線形回帰木構築アルゴリズムを新たに考案した.本アルゴリズムの有効性を検証するために,シミュレーション実験などを行っている.
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