Research Abstract |
本研究は織物の視覚的な風合い評価を目的として,表面特性(織組織,染色・仕上げ加工工程)の異なる8種類の織物を試作し,3次元変角光度計を用いて布地表面の光反射特性を測定した.さらにこれらの試料を用いて専門検査員(染色・仕上工程における検反作業の熟練者,生地の品質管理に携わる熟練者)8名による視覚的風合いの官能検査をおこなった.試料は,色彩の影響を除くために,無彩色のブラックフォーマルスーツ生地を用いた. 三次元変角光度計は,試料を設置するための試料台と発光部,受光部から構成され,各部が可動することによって,三次元空間内で任意の角度から光が入射され,試料表面である方向に反射する光量の測定が可能である.本実験では,試料台を360°回転させ,入射角を60°,受光角を60°(正反射光用),40,20°(拡散反射光用)に設定した時の光量を測定した.測定結果より,正反射光量は朱子織,綾織,平織の順に大きく,浮き糸が多い試料ほど反射光量が大きかった.また,染色・仕上工程別の比較では,染色濃度が濃い試料ほど,反射光量は少なかった. 一方,官能検査より,染色濃度が濃い試料ほど,視覚的な風合いを表す形容語の平均嗜好度は大きくなった.すなわち,ブラックフォーマル素材において,「光沢がない試料」ほど,「鮮やかである」,「高級感がある」,「品がある」,「重みがある」,「落ち着きがある」,「美しい」と評価された. 今後は織物の設計要素,布地の光反射特性,視覚的風合いの関係をデータベース化し,生地表面の光反射特性から視覚的風合いを予測する方法について検討し,視覚的風合いの定量評価手法構築を目指す.
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