2004 Fiscal Year Annual Research Report
化学パターンダイナミクスに基づく粘菌バイオコンピューティング
Project/Area Number |
16700271
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高木 清二 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (80372259)
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Keywords | 真性粘菌 / Physarum / 自己組織化 / 情報統合 / 走化性 / 細胞リズム / パターン形成 / アメーバ運動 |
Research Abstract |
1.移動極性の発現とNOSの分布 呼吸が移動極性の発現と関連していることから,粘菌に多量に含まれるNOS(一酸化窒素合成酵素)の分布をNADPH-diaphorase組織化学染色法により調べた.光学顕微鏡下で,メッシュワーク構造をとる染色像が得られた.進行先端付近に多く存在し,細胞骨格系と類似の構造をとる非細胞骨格系タンパクNOSの細胞内分布を見出した. 2.忌避・誘引情報の統合 粘菌を誘引・忌避物質で同時刺激し,細胞応答を調べた.行動実験のため走化性実験を考案した.コントロールと刺激物のいずれにどの程度進展していくかを測定し,無次元の走性指数を求めることで細胞行動を定量評価する実験系を考案した.inputである膜レベルの応答とoutputである細胞行動を計測し,細胞内部の情報統合機構を探った. 受容膜電位は誘引物質が共存しても,忌避物質に対して単独刺激と同じ濃度領域で応答した.ところが,行動レベルでは2桁高い濃度の誘引物質が存在すると忌避物質に対する応答の濃度は2桁高くなった.細胞内での情報統合システムの存在が示され,その統合モデルを構築した. 3.移動を決める因子の解明 進行先端部の特異性を示す事実を発見した.粘菌を一方向に一次元的に進むように系を設計し,細胞手術により粘菌を切断して移動速度の変化を測定した.全長10cm程度の粘菌の進行端から1mm程度までは,同じ移動速度で進行した.上述の方法で厚み測定を同時に行った結果,切断後10分間程度は粘菌特有の収縮弛緩の振動運動をせず一定の速度で進展する事実を見いだした.また粘菌を嫌気的条件下におくと,流動リズムは持続するが,移動は停止した.今回発見したこれらの事実は従来信じられてきた,圧力差によって原形質ゾルを押し出すことによって進行すると言う仮説を否定する.進行部には特異的に移動にあずかる仕組みがあることを見出した.
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