2004 Fiscal Year Annual Research Report
グラム陽性細菌におけるオルソログ遺伝子の分布の比較に関する研究
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16700274
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平川 英樹 九州大学, 大学院・システム生命科学府, 特任助手 (80372746)
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Keywords | バイオインフォマテクス / 比較ゲノム / グラム陽性細菌 |
Research Abstract |
グラム陽性細菌におけるリーディング鎖への遺伝子の偏りの原因は今のところ完全に明らかにされていない。グラム陽性細菌においては、これまでに58種の全ゲノム配列が決定されている。本研究では、ゲノム上の遺伝子の偏りという観点からゲノム構造の進化を明らかにするために、グラム陽性細菌間でオルソログ遺伝子と必須遺伝子のゲノム上の分布や遺伝子の並びが保存された領域(シンテニー)を比較する。これまでに全ゲノム配列が決定されているグラム陽性細菌から10種を代表として選出し、DNA鎖を複製開始点と複製終了点で右側と左側に分類することで、ゲノム上での遺伝子の位置を調べた。また、グラム陽性細菌における必須遺伝子は枯草菌の271個の必須遺伝子とのオルソログ関係から推定した。その結果、ウェルシュ菌ではゲノムの左側に右側よりも5.5倍もの必須遺伝子が存在しており、この特徴はウェルシュ菌のみで見られた。そこで、必須遺伝子とシンテニーとの関係を明らかにするために、ウェルシュ菌と同属であるC.tetaniとC.acetobutylicum間でシンテニーを調べたところ、11個の共通の長いシンテニー領域が検出された。また、ウェルシュ菌の必須遺伝子の84%は共通の長いシンテニー領域中に存在していた。このことから共通の長いシンテニー領域はウェルシュ菌の生育にとって重要であると考えられた。他のグラム陽性細菌における共通の長いシンテニー領域の保存度を調べたところ、Streptococcus属ではリボソームタンパク質のシンテニーのみが保存されていたが、それ以外の細菌では長い共通のシンテニー領域は保存されている傾向が見られた。また、シンテニー領域の保存度は、ゲノム構造の安定化に働いていると思われるRecQの遺伝子数と関係があることが分かった。今後はシンテニーにおいて保存されている遺伝子の傾向を詳しく調べていく。
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