2004 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスステロイドが海馬神経の損傷を引き起こす機構の解明
Project/Area Number |
16700284
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木本 哲也 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60292843)
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Keywords | ストレス / ニューロステロイド / エストロゲン / 海馬 / コルチコステロン / ストレスステロイド |
Research Abstract |
本研究は、ストレスの影響を大きく受ける記憶学習機能を司り、ストレスステロイドの主要な標的である海馬において、海馬自身で合成されるニューロステロイドとしてのエストロゲンの合成とその作用部位であるエストロゲン受容体を中心に神経細胞損傷が引き起こされる機構の解明を目指すものである。本年度は、まず神経細胞損傷をもたらすストレスを負荷されたラットの海馬において、脳内エストロゲンの作用を媒介する主要な受容体である・型エストロゲン受容体(ERα)の神経細胞内での存在状態の変化を検討した。虚血ストレスを負荷したラットより調製した脳海馬のホモジネートに対して遠心分画を行い、我々が先に作成した特異性の高い抗ERα抗体(RC-19)を用いてERαの細胞内での移動を検討した結果、細胞質よりシナプトソーム画分への移動が観察された。さらにRC-19による免疫沈降実験を行いERαと結合する蛋白を検討した結果、ストレス負荷によってERαとストレス蛋白質であるheat-shock protein 90の相互作用が引き起こされることを発見した。これらの現象は、末梢からのステロイド供給を遮断しても観察されたことから、末梢からのストレスステロイドの供給を必要としない独立した脳内でのストレス応答として引き起こされるものと考えられる。次に、脳自体でのストレス応答について、ニューロステロイドとしてのストレスステロイド(コルチコステロン)の合成を検討した。これまでの方法に比してステロイド抽出法の改善を試み、コルチコステロンの回収効率を著しく高めることに成功して海馬でのコルチコステロン濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析と質量分析を用いてより正確に測定することに成功した。その結果、副腎摘出を行い末梢からのステロイド供給を遮断したラットで海馬のコルチコステロン濃度は血中濃度の数倍に達することが明らかとなり脳内のストレスステロイド合成が実証された。
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